寒い季節は読書に最適です。なかでも図書館はお金がかからないので利用する方も多いことでしょう。でもそれだけじゃないのです。今回は図書館利用のタダ以外のメリットについてお話します。
- 図書館のサービス内容を時々チェックしてみる
- 図書館併設のカフェを楽しむ
- 近隣の大学図書館を利用する
- 地元の図書館以外から取り寄せしてもらえるか確認してみる
- 図書館なら絶版の本も読める
- 調べたいことを助けてくれるレファレンスサービスを利用する
- 図書館の役割とは
- 東京都千代田区立図書館の多様なサービス事例とは
- 一般的な図書館のサービスはどう変化しているか
図書館のサービス内容を時々チェックしてみる
公共の図書館は主に各自治体ごと存続しています。貸出カードを作れるのは住んでいる地域の図書館であることが基本ですが、その他通勤や通学で連続して通う場所なら利用できることもあります。
利用規約やサービスは各図書館ごとに異なりますが、内容は時の経過とともに変化しています。以前にはなかったサービスが増えていることもあります。自分が住んでいる地域の図書館や勤務先近くの図書館のウェブサイトを時々チェックしてみることをおすすめします。
図書館併設のカフェを楽しむ
図書館にはカフェが併設されていることがあります。一般のカフェも良いのですが図書館のカフェというのは新たなお出かけ場所に良いかもしれません。
昨年の秋頃に久しぶりに立ち寄ったある図書館は食器などがリニューアルされており、なかなか良い感じでした。いまどきの図書館カフェって進化していますね。
行政施設=地味
のイメージは変わっています。
近隣の大学図書館を利用する
また、自分が住んでいる地域に大学の図書館利用規定を確認することもおすすめします。
というのも大学によっては地域の住人に行政の図書館同様に解放していることがあるからです。その他の利用規定に沿えば利用できることがあります。大学の図書館が利用できればさらに図書館の選択肢が広がります。
地元の図書館以外から取り寄せしてもらえるか確認してみる
また、自分が普段利用している図書館に蔵書がない場合は、近隣図書館や国会図書館から貸し出しをしてくれる場合があります。
自分で直接遠方の図書館に行かなくても良いのです。探す手間も図書館が手伝ってくれます。まずは最寄りの図書館に相談してみましょう。一番良い方法を検討してくれるはずです。
図書館なら絶版の本も読める
図書館は一般に「タダで利用できるのが最大のメリット」だと思われています。ですが実はそれだけではないのです。例えば絶版になった本でも図書館ならあっさり見つかることがあります。
書店では本が売れなくなったら店頭に並ばなくなります。ですが図書館は売れた、売れないに無関係に存続し続けます。
もしかしたら書店に並ばなくなった本に有用な本が眠っているかもしれません。そうした可能性が残されているのが図書館の役割の1つだと考えます。
調べたいことを助けてくれるレファレンスサービスを利用する
レファレンスサービス(reference service)とは、図書館利用者が学習・研究・調査を目的として必要な情報・資料などを求めた際に、図書館員が情報そのものあるいはそのために必要とされる資料を検索・提供・回答することによってこれを助ける業務である。また需要の多い質問に対してあらかじめ、書誌・索引などの必要な資料を準備・作成する作業もこれに付随した作業であると言える。
レファレンスサービスとは研究や調査、学習に必要な情報を図書館が助けてくれるサービスです。膨大な資料の中から図書館の事を知り尽くしたプロが手伝ってくれます。もちろん秘密は守られます。
個人では調査に限界があります。このようなときは図書館のレファレンスサービスも検討しましょう。
図書館の役割とは
図書館の本は売ることが目的ではありません。では何が目的なのでしょうか。改めて考えるとよくわかりません。調べてみました。
日本図書館協会と文部科学省の記述が見つかりました。一部を抜粋します。詳細は各ウェブサイトでご覧ください。
日本図書館協会の記述
日本図書館協会には以下のような記載があります。
図書館の自由に関する宣言
図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することをもっとも重要な任務とする。
基本的人権の知る自由が基本になっています。思うに例えば「お金がないから本を読めない」ということが理由で「知らなかった」ということを防ぐ役割があると思われます。
第1 図書館は資料収集の自由を有する
図書館は、国民の知る自由を保障する機関として、国民のあらゆる資料要求にこたえなければならない。
いわゆる「情弱」といわれるように情報弱者は様々な不利益を生じます。一方で有益な情報は社会的地位の高い人などには集まりやすい特性があります。
情弱が先か、不利益が先か、という問題がありますが少なくとも情報を遮断する事だけは避けなくてはなりません。
誰もが得ようという意志さえあれば正確な情報を得る機会は与えられていなくてはなりませんよね。
第2 図書館は資料提供の自由を有する
国民の知る自由を保障するため、すべての図書館資料は、原則として国民の自由な利用に供されるべきである。
図書館は、正当な理由がないかぎり、ある種の資料を特別扱いしたり、資料の内容に手を加えたり、書架から撤去したり、廃棄したりはしない。
諸外国の歴史ドラマなどを見ているとよく、こんな場面があります。それは権力の入れ替わりの際に以前の支配層時代の書物などを焼き払う場面です。
それは新たな支配層にとって以前の思想や歴史が記載された書物が邪魔になるからです。
何らかの書物を閲覧した時、どれが正しくてどれが正しくないのかは誰にもわかりません。つまり図書館資料を選別することも誰にもできないということです。
私達は個人所有の書物は個人の判断で取捨選択をします。ですが図書館はどれかをひいきしたり、邪険に扱うことをしないということですね。これは人の思想などを選別しない事と同意義です。
第3 図書館は利用者の秘密を守る
読者が何を読むかはその人のプライバシーに属することであり、図書館は、利用者の読書事実を外部に漏らさない。ただし、憲法第35条にもとづく令状を確認した場合は例外とする。
誰が何を読むかを漏らすことはしないということです。読む本とその人の興味対象は連動しています。また何を目的に読んでいるかは誰にも知られないということです。
第4 図書館はすべての検閲に反対する
検閲は、権力が国民の思想・言論の自由を抑圧する手段として常用してきたものであって、国民の知る自由を基盤とする民主主義とは相容れない。
文部科学省の記述
また、これからの図書館像:文部科学省には図書館の基本的在り方の記載があります。
図書・雑誌・新聞等の出版物は,現代社会における知識と文化の有力な流通手段であり,将来,人類の文化遺産となる。これらの様々な出版物を収集・保存し,様々なサービスを通じてすべての人々に提供する図書館の基本的役割は今後も変わらない。これに加えて,インターネット等の電子情報へのアクセスを提供するとともに,電子情報を発信あるいは保存することもこれからの図書館の役割である。
日本図書館協会の記述に対し、文部科学省の記述はもう少しゆるい印象です。「将来,人類の文化遺産となる」という記述が印象に残ります。
東京都千代田区立図書館の多様なサービス事例とは
例えば東京都千代田区立図書館のウェブサイトを見てみると多様なサービスが用意されています。特に驚いたのは以下のサービスです。
最近の図書館は進化していますね。単に本を借りたり調べ物の助けを受けるだけではないようです。
iPad館内貸出サービス
インターネットでの調べもののほか、新聞の電子版や便利なアプリを日比谷図書文化館内で利用できるiPadを貸し出しています。
館内に5台しかないようですが、従来の様にパソコン設置場所に頼らず利用できますね。自分のスマホやタブレットを持参すれば済む事とはいえ、忘れたとか充電切れなんていうときはこんなサービスがあることを覚えておいて損はないですね。
もはやカフェ並みのサービスが整っています。最近はいろんなところで無線LANが設置されていますが図書館で設置されているところが増えれば調べ物などにも便利ですよね。
インターネット接続サービス(無線LAN・有線LAN)
無線LAN
無線LANでインターネットにアクセスできる環境(IEEE802.11bgnac準拠の無線LAN)を提供しています。対象館:千代田図書館、日比谷図書文化館、四番町図書館
有線LAN
有線LANコネクタと電源コンセントを設置している席をご用意しています。対象館:千代田図書館、日比谷図書文化館
ナクソス・ミュージック・ライブラリー(オンライン音楽図書館)
何とオンラインを通じた音楽図書館だそうです。
図書館ではCDレンタルやDVDレンタルを行っているところが多いのですが、こちらの図書館はネットを通した最先端のシステムが整備されているようです。
ナクソス・ミュージック・ライブラリーとは、世界中で利用されているオンライン音楽図書館で、インターネットを通じて、高音質の音源をお聴きになれます。貸出券をお持ちの方は、千代田区立図書館ホームページ内「マイページ」からご利用になれます。
歴史的音源配信(国立国会図書館)
こちらは国立国会図書館から公立図書館に配信されています。1900年~1950年頃の音源を聴くことができます。もう手に入らないとあきらめていた音楽がこちらで聴けるかもしれませんね。
歴史的音源とは1900年初頭~1950年頃に、国内で製造・録音されたSP盤および金属原盤などの音楽や演説などをデジタル化した音源です。落語・長唄・管弦楽・歌劇・清元・浪花節・歌謡曲・講演・ジャズなどの内容が含まれます。
アニメーションブック専用PC館内貸出サービス
電子絵本を館内で貸出するサービスです。子供ってタブレットの様なデジタル機器を結構好みます。どんな絵本があるのか興味がありますね。
アニメーションブック(電子絵本)を読めるタブレットPCの館内貸出サービスを、千代田図書館と四番町図書館で行っています。
デジタル化資料閲覧サービス(国立国会図書館)
国立国会図書館のデジタル資料を千代田区立図書館で閲覧できるサービスです。国立国会図書館と千代田区立図書館は近距離ですが、区立図書館の方が利用のハードルが低いわけです。同じ資料ならば気軽に利用できる場所の方が良いですよね。
国立国会図書館がデジタル化した図書や雑誌のうち、絶版などの理由で入手困難な資料を、千代田図書館内で閲覧できるサービスです。
一般的な図書館のサービスはどう変化しているか
東京都の図書館はこんな感じですが、他の図書館はどうでしょうか。私が住んでいる行政の図書館は越して来た約10年前と比較して大きな変化はありません。基本的に本の貸し出しとレファレンスがベースです。
ただ、千代田区立図書館のように最先端の図書館が行っていることは他の図書館も改善される可能性はあるかもしれません。
図書館を単に「お金をかけずに利用できる場所」という位置づけにとどめない意識が重要だと思います。
とは言え、本が生み出される背景は商業的な背景と無縁でいられないことも事実です。ときに図書館の存在自体が「そうした存続に影響を与えているのではないか」と不安視する声も見受けられます。「図書館で本を貸し出すことが本の売れ行きに影響を与えているのかどうか」について正確なデータや情報を確認することはできていません。そうした声と不安があることは無視できないことです。一方で図書館の存続意義は重要だと考えます。商業的な影響に関することと図書館の存続意義の関連については課題があると言えます。
そうした課題は決して無視することができない問題ですが同時に「図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供すること」も重要です。どうすればこの両者の問題をクリアできるのかは考えていかなくてはいけないことです。