今回は、お金に関する本ではありますが、よく見かける「お金本」とは違う視点を得られる本を紹介します。
著者の成毛眞氏とは、書評サイト「HONZ」代表であり、元マイクロソフトの社長を務めた方です。
この方が一体、どんな視点でお金と向き合っているのか。いわば世界を視野に置いた企業を率いていた方ですから、興味津々というわけです。
ところが実のところ、著者は私たちが想像するようなお金の使い方はしていないことがわかりました。
例えば、若い頃は一般的な収入だったようですが、その時期から現在も定期預金を一円もしたことがないそうです。さらに生命保険に入ったこともないそうです。
では、著者の御実家が裕福だったのか?といえば、そういうことでもないようです。「ごく一般的な中流階級だった」そうです。
では、「お金は一体何に使っていたの?」と疑問が沸きますよね。それは、自分の事業と信頼できる友人の事業に投資したのだそうです。
その投資先にユーグレナの名が挙がっています。ユーグレナと聞いて「インベスターZ(1)(リンク先はアマゾンです。注:ユーグレナの話が登場するのは1巻ではありません)」にも登場していたことを思い出しました。
一見して、素人目には「そんな使い方でも大丈夫なの?」と不安になってしまいそうな価値観です。
けれども、単に「貯める」「増やす」だけがお金の使い方ではないという事に気が付かされます。
では、どのくらいお金を稼げばいいのか?については
あなたにとって「幸せな人生」に必要な予算を考えてみるべきだ。
と あります。要は、その予算を稼ぎさえすればいいわけです。ところが私たちは、やみくもに不安になり、お金はあればあるほどいい、としか考えられなくなっています。
また、氏のお金に関する考えは
増やしたり、貯めたり、節約したりすることよりも「稼ぐ」ものだそうです。
稼ぐと言えば、通常「仕事が辛い」とか「働かなくてはいけない」とマイナス要素に考えが向きがちです。
一方で、氏の価値観はまるで違います。
「稼ぐ」ことは人生でもっとも面白いことの一つだし、結果もわかりやすい。
そうです。
この本には、一般的な資産形成とは違う視点をもつ氏のやり方が記されています。前述した友人の事業への投資もそうですし、ほかには「遊びながら稼ぐ」視点でコレクションした物を数年後に売るやり方などです。
この本をはじめとして、氏の本を読む事は
「グローバルな世界に身を置き、実際に活躍した人の思考は、このように考えるのか。」
と、自分にはない思考の流れを知ることができます。
このように書くと、突拍子もないアドバイスを本の中でされるのではないか?と思われるかもしれませんが、そうではありません。
他の著書でも氏が言っていますが、普通の人が読むであろうことを想定して現実的なことを踏まえたアドバイスがなされています。
例えば「仕事を辞める」というようなことではなく
老後の蓄えが心配なら、定年後も稼げる手段を作っておけばいい。
というような実践可能で等身大の内容などです。
いくら貯めるかではなく、どれだけ遊びながら稼ぎ続けられるか、を考えたほうが人生は楽しい。
考えてみれば、庶民つまりサラリーマン世帯の収入とは報酬ではないのです。つまり生活費を受け取っているに過ぎません。
となれば当然、何も策を取らなければお金が不足する可能性があるわけです。特に分不相応な支出を続けた場合、「生活費」では足りなくなるのは当然です。
ところがうっかりすると、生活費であるはずの給与収入を報酬であり、給料の差額をステータスだと勘違いしてしまいがちです。
一方で氏はステータスには興味がないと言いきっています。
私は、子供の頃から今に至るまで、ステータスに何の興味もない。ある程度稼ぐようになってからも、本当の大金持ちを見てしまうと、見栄にお金を使うなんてバカらしく思える。絶対に追いつけないようなビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズがTシャツにジーンズ姿でいるのを見ると、意味がないことがわかる。
生活費である給与収入ではなく、報酬を受け取っている立場にある人でさえ、ステータスに対する意識はこのようなものなのです。
同時に本当のお金持ちは、贅沢をしないことなども記載されています。ところが私たちが思い描くのは、金持ちでもなく、単なる庶民であるのに、金持ちの誤ったイメージに踊らされている姿です。
それに加えて、シンプルだが大事なのは、お金を無駄に減らさないこと
とあるように、無駄に減らさないことが貯めるより大事なんですね。
そして注目したのは
もし2000万円あるなら「円」で持つな
の箇所です。
2000万円と聞いて思いうかぶのは、少し前に話題になった「老後2000万」です。なぜ、「2000万円あるなら「円」で持つな」と書いてあるかといえば、ハイパーインフレの可能性は低いけれどもインフレの可能性があるからだそうです。
私の親世代、つまり私が子供だった頃は何も考えず、ひたすら銀行に預金をしていれば良かったわけです。おそらく、多くの人がその感覚から抜け出せずにいます。
ところが今や、単に銀行に預けていれば実質価値が目減りする可能性が大の時代に生きています。とはいえ、実践できる対策はあるわけです。
いたずらに不安になるのではなく、本書に書いてあるように、自分が不安なく暮らせるお金がいくら必要なのかを試算してみればいいし、そのためにはどうやってお金を運用するかを十分に検討すればいいわけです。
もちろん、だからといって「絶対安心」とはいえません。けれども「絶対」という文字はいつの時代にでも当てはまらないのは当然です。
となれば、この本にもあるように楽しんで稼ぐことが重要なわけですね。「稼ぐ」概念そのものを見直すことで新たな視野も生まれます。
いろんな視点があることに気が付くことができる本です。