簡単に暮らせ

ちゃくまのブログ。女性ミニマリスト。合理的な家事、少ない服で暮らす、家計管理、お金、捨て作業のコツ。好きな事をして生きる暮らしの追及

本「カルト村で生まれました。」の感想・所有物が一切ない暮らしとは?



こんにちは ちゃくまです。このブログは暮らしに関することをつづっています。

・ミニマリスト的な暮らし方 ・家事を簡単にする工夫 ・お金に関する管理方法(筆者はFPです) ・世間に惑わされない生き方 ・・など。お役に立てたらうれしいです。

 

「カルト村」と表現されていますが、実際には、一つの価値観のもとに複数の人が共同生活を送っている日本国内に実際に存在する団体の組織のようです。その「村」で生まれ18歳までを生活した著者の実体験をもとに書かれた本です。コミックエッセイのスタイルです。普通、このような実体験をもとにしたものは、もっと欝々しているか、怒りに近い感情を含むようなイメージがありましたが、冷静に淡々とした視点で描かれているので全くそういう嫌な読後感はありません。素晴らしい本です。

本の概要

始めに、主な概要はこんな内容です。

「所有のない社会」を目指す「カルト村」で生まれ、19歳のときに自分の意志で村を出た著者が、両親と離され、労働、空腹、体罰が当たり前の暮らしを送っていた少女時代を回想して描いた「実録コミックエッセイ」。 〈カルト村ってどんなとこ?〉 ●大人と子供の生活空間が別々 ●朝5時半起床で労働 ●布団は2人で1組 ●食事は昼と夜のみ ●卵ミルクを飲ませられる ●お小遣いはもらえない ●すべてのモノが共有で、服もお下がり ●男子は丸刈り、女子はショートカット ●ビンタ、正座、食事抜きなど体罰は当たり前 ●手紙は検閲される ●テレビは「日本昔ばなし」のみ ●漫画は禁止、ペットも飼えない ●自然はいっぱい。探険など外遊びは楽しい♪ (アマゾン、紹介ページより引用)

以下、ネタバレも少々ありますので、ご注意ください。

考えさせられたこと

はじめ、悲壮感や精神的、身体的に辛かったことが描いてあるかと想像していました。確かに、「世話係」の人からの体罰や、意味があるのかわからない説教、空腹感が大きく、常に食べ物の事ばかり考えていた子供時代、甘えたい盛りに親に会えるのは数か月に一度、「自分の持ち物」「お金」の概念の意味がわからなかったことなど驚くことばかりでした。

ただ、救いなのは、現在の著書を読む限り、著者はその中でも「自分」を見失っていないし、聡明で客観性を失っていないことです。文字は全て著者の手書きですが、いずれも誠実で聡明な著者の性格がにじみでているような好印象の文字です。

そして、普通の概念と暮らししか知らない私にとっては驚くことばかりの村の生活ですが、一見、閉鎖的で情報が限られていても、楽しみを見つけることや喜怒哀楽の感情は失っていない人の生命力の強さみたいな事にある種の感動を覚えます。

生まれた時から、この村だった著者ですが、世話係の意味不明な説教に思考が影響されることはなかったし、一緒に暮らす子供たちも割と同じような感じで、案外、人って強い物だなと感じました。たとえ生まれた時からその場所で暮らしていても「おかしい」と感じる感覚は保っています。

もっとも、カルト村とはいえ、思考を徹底的に変えるようなところまで強制はしていなかった、ということなのかもしれませんが。救いなのは高校を卒業したら、村に残るか出るかは自由と言った選択が残されていたことでしょうか。

とはいっても、生まれた時からこの村で暮らし、その後を外の世界で生きるというのは、どういう感じなのかは想像がつきません。続編を期待したいところです。

世の中には様々な価値観や主張が混在していて、どれを選択するかは各自の自由であるわけですが、子供にはその選択肢が原則、ありません。

そして自分の子供であっても、育児を直接自分で行わず、世話係が一括して行うという事は、人さえも共有しているということなんでしょうか。

そして祖母から送られてきた、かわいい洋服や筆箱も、一旦、世話係が確認をして、必要と思われる別の他の子供にいきわたってしまう事は珍しくないシーンが描かれていました。確かに、そうした人がいる、いないことによる所有物の偏りはなくなるので、互いの持ち物や服装を理由にケンカしたり優越感や自虐感を抱くことはないでしょうが、何か腑に落ちない気分にはなりますよね。

(その代りというか、別の場面では、著者が祖父母の親類の結婚式に出ることになったときには、服や小物を保管してある倉庫から、かわいいワンピースが支給されたりもしています。)

そして、細かい点を挙げれば、やっぱり育ち盛りの子供には「朝、昼、晩プラスおやつと甘い物」という普通の食事が必要だという事も改めて知りました。

この本の中で、村の習慣で朝食を食べることができません。それによって体調不良になり、学校の保険の先生がこっそり飴やクッキーをくれたのを食べた途端、元気が回復したエピソードが描かれています。そして運動会の前だけは、学校からの依頼により朝食を食べさせて登校させることにしたときに、初めてホットミルクを飲んだ著者が、幸福感を得て

すごく力が出て気持ちも落ち着いたのを覚えている

と書いています。

最近は朝食抜きが健康に良いというような健康法が推奨されているのをあちこちで見かけます。確かに、一部、それによって健康面でメリットのある方もいるのでしょう。けれども、子供に限ってはやはり朝食は必要なんですね。そういう事がこの本を読んでよくわかりました。そして甘い物も摂りすぎは良くないですが、成長期の子供にはある程度は必要なんですね。

そして、「所有物がない世界」というのは、かえって所有欲を増長しそうな気がするし、どんなことでも極端は無理があるのだと痛感しました。

そして、情報過多とか、モノ余りの弊害を見聞きすることが多い昨今ですが、情報も、物も、「ない」のでは困るわけです。情報は「ない」よりも「過多」の方が100倍マシですし、「物」も、ほとんどない生活は無理があると感じます。

そして、いずれもそれなの思考や行動に振り回されてしまうのは「子供」という事は、どこの世界でも同じですね。

とにかく、物を持つことや情報との向き合い方とか、いろんなことを考えさせられる作品です。

 

楽天ブックス カルト村で生まれました。 [ 高田かや ]