偶然、NHK朝の連続テレビ小説「とと姉ちゃん」に登場する、生活雑誌「美しい暮しの手帖」第一号を見る(読む)機会に恵まれました。
場所は日本武道館の近くにある昭和館という施設内の図書室です。東京都千代田区にあります。
昭和館とは?
施設概要
昭和館は、主に戦没者遺族をはじめとする国民が経験した戦中・戦後(昭和10年頃から昭和30年頃までをいいます)の国民生活上の労苦についての歴史的資料・情報を収集、保存、展示し、後世代の人々にその労苦を知る機会を提供する施設です。
アクセス
〒102-0074 東京都千代田区九段南1-6-1 昭和館 【TEL】03-3222-2577 【FAX】03-3222-2575 地下鉄東西線・新宿線・半蔵門線〈九段下駅/4番出口〉、JR飯田橋駅から徒歩約10分
九段下駅4番出口を出ると目の前にあります。
4階の図書室の入館は無料です。
これは、エレベーター前に貼ってあったポスターです。当然ながら、現物の本は撮影などできませんので、画像はありません。
偶然、「美しい暮しの手帖」・第一号を読む機会に恵まれました
ちょうど、その日の朝、テレビで、このポスターと同じ雑誌そのものが紹介されていたのを観たのです。実は何も知らずに、この日、本当に、たまたまここに立ち寄ったのです。
そしたら、なんと、今朝、テレビで見たばかりの「暮しの手帖・第一号」が、ここの図書室で自由に見られるとは!本当にびっくりしました。
「そんな貴重な本を本当に見られるのかな?」
と思ったのですが、本当に見られました。1号だけでなく、5号くらいまで展示されていました。しかも、図書室には職員の方以外、私のほかは男性が3人だけ。そして誰も「暮しの手帖」を読んでいる人はいませんでした。
暮しの手帖より前に出版された「スタイルブック」もありました。この時知ったのですが、4月からずっと展示公開されていたんですね。この昭和館4階の図書室には、昭和にちなんだ本を中心の蔵書です。こういう図書館があるとは。新たな発見でした。
美しい暮らしの手帖・第一号の充実度が半端ない
さて、暮しの手帖・第一号の感想です。まず、その内容の豊富さに驚きました。テレビでも紹介されていたのですが、(これはドラマとしては今日現在ではネタバレになるかもしれません)
「美しく暮らしたい」という気持ちは封印できない
布や物資が不足している中でも、「何とか美しく暮らしたい」という気持ちを封印することはできないんですね。装うことは、見栄とかそういうことではなくて、生きがいとか楽しみとか、現代とは違うあり方を感じました。
さらに現代との大きな違いは、とにかく布をはじめ、物がないのです。そんなさなか、浴衣を今でいうリメイクで洋服に作り替えてしまう方法が載っているんですね。しかも、その方法は、ミシンも特別な技術も要らないのです。かかる時間は1時間ほど。
その他、おがくずを摘めて作るぬいぐるみとか、狭い部屋を有効に使う工夫などが図解入りで掲載されています。ぬいぐるみは型紙もついています。
せまい住居の有効活用
特に印象的だったのは2畳,3畳、4畳半、6畳の部屋についての家具の配置の提案でした。現在の場合、6畳以下では「狭い」印象があります。でも当時はなんと2畳からなんですね。狭くても何とか快適に過ごそうとする活力というか意気込みを感じました。
意外な事に、いずれも布団ではなくてベッドを置くスタイルが中心だったのが印象的です。
後半は、読む情報が掲載されているのですが、これがまたびっしり記載してあって、簡単には読み終えられません。特にアメリカの家庭を意識した内容の文章が多いようでした。当時はアメリカの暮らしぶりが憧れであり目標であったのでしょうね。
とにかく、一冊の雑誌のあまりの充実っぷりに圧倒されました。しかも、これらが広告を一切取らずに作られているんですよね。
22日まで展示されているそうです。
昭和館の常設展
ちなみに、この昭和館の常設展示6階と7階の有料施設です。入場料は大人300円、大学、高校生は150円、小中学生は無料です。
音声案内は無料で貸してくれます。
展示内容は「母と子の戦中・戦後」をメイン・テーマとして、昭和10年頃から昭和30年頃までの国民生活向上の労苦を伝える実物資料を展示しています。昭和館には現在約4万3500点の実物資料が収蔵されており、常設展示室にはそのうちの約700点が展示されています。
戦時中前後の資料が多数展示されていました。出兵前の方のために縫った手ぬぐいなどは、何とも言えない心情になりました。
とにかく現代は、余分な物が多くて「出来るだけ物を減らしたい」と思う人が増えているのに対し、この「暮しの手帖」は、庶民でも比較的手に入れやすい、誰の家にでもありそうなものを使って、新たな物を生み出そうとしています。現代とは対照的です。
まとめ
当時は、物を何とか生み出すことが生きることであり、活力の原点だったのかもしれません。最近の日本は物が増えすぎて、持て余しています。当時は物が本当に不足していました。何もない状態からスタートして、不足しない生活を望んできたのでしょう。その望みはかなったと言えます。ところが皮肉なことに、今度は多すぎる物に翻弄されている人が増えているんですね。どのように物と関わっていくのかについては、すぐに結論は出ません。少し時間をかけて考えて行かなくてはいけないのかもしれない。そう思いました。