「戦略十訓」を知っていますか。これは1970年代に大手広告代理店が掲げた10項目です。昨年も少し触れたことがあります。
「ミニマリストブーム」もまた仕掛けられたブームではないのだろうか
.2016年あたりから注目された「物を持たない暮らし」は当初、一部の人たちがひっそりと行っていたイメージがありました。ところがNHKの朝の番組などをきっかけに「ミニマリスト」という造語が独り歩きし始めたのです。思いのほか、世間一般の反応の多くは冷ややかなものでした。
その理由はおそらく、次のようなことにあるのでしょう。.
「ミニマリスト」に世間が冷ややかな理由
- ミニマリストという造語が格好良すぎる
- 貧乏の言い訳なのではないか
- 特別な事を何もしていないのに偉そうである
- 都会や一人暮らしでなければ実現不可能である
- 物を持たないだけで特別感を出すこと自体がおこがましい
- 物がないことは、わざわざアピールすることではない
それはそうと、私がこの時期に直感的に抱いた疑念があります。それは
「ミニマリストブームこそ仕掛けられたブームなのではないか。」
ということです。それは『戦略十訓』にある「2」の「捨てさせろ」という項目です。もう、皆ものをたくさん持っています。だから買うものがないんです。
そしてこのころ、「不用品引き取りセール」などが話題にもなりました。例えば古いいらないシャツを1枚持って行けば3,000円以上のお買い物につき500円値引きします。というものです。不用品処分ができるうえに、値引きが出来るんです。このセールは今ではみかけることがなくなりました。
おそらく店舗が直接引き取りをする方法はあまりに負担が大きかったのではないでしょうか。話題作りにはなりましたが、不用品処分のコストなどを考慮したら割に合わないのは当然です。
戦略十訓
戦略十訓
1970年代、電通PRにより提唱されたとされる
- もっと使わせろ
- 捨てさせろ
- 無駄使いさせろ
- 季節を忘れさせろ
- 贈り物をさせろ
- 組み合わせで買わせろ
- きっかけを投じろ
- 流行遅れにさせろ
- 気安く買わせろ
- 混乱をつくり出せ
ところが一般大衆が自分で自分の物を手放してくれるなら、話は変わります。そこで物を持たないブームを仕掛けるのです。すでに物にあふれて困っている人が多いのですから、このブームは注目されます。
もちろん、持たないブームがそのまま進行して「買わない」人が増えれば困ります。でも心配は要りません。普通は手放してしばらくすれば、やっぱり物が欲しくなる人が普通だからです。
ごく一部の人だけが持たない暮らしを続けるのであって、ほとんどの人は、いったん空いた空間にまた物を入れるのです。それは「7」の『きっかけを投じろ』にもつながります。
もし、私たちが堅実に物を取り入れていくのならば、この逆をいけばいいということです。
無駄な消費をしない新戦略10訓
- もっと使うな
- 捨てるな
- 無駄使いするな
- 季節を忘れるな
- 贈り物をするな
- 組み合わせで買うな
- きっかけを機にするな
- 流行遅れを期にするな
- 気安く買うな
- 混乱に影響されるな
もっと使うな
消費はキリがありません。本当は少しの品物で十分、豊かに暮らせます。ところがもっと消費するために今よりたくさん使うように仕向けられています。
捨てるな
人は空間に合った物を取り入れようとします。例えば広い家に住めばそれにあう家具や家電を買いたくなります。賃貸の時には考えなかった大きなテーブルやテレビを買うようにしようとします。
無駄使いするな
クリスマスだから、正月だからと特別な出費が必要だったのは昔の話です。現代の食事は日常がクリスマスです。チキン、パスタ、ステーキ、寿司、すき焼き・・プレゼントにしても、買おうと思えばたいていのものは手に入ります。イベントだからと散在する方が無駄です。
季節を忘れるな
日本は四季のある国です。だから季節を意識すれば、日本古来の合理的な暮らしができます。旬の食べ物を取り入れれば安くて健康的な食事ができます。ところが季節に合わない物を食べようとすれば余計な燃料等が必要になります。
贈り物をするな
贈り物には見栄がはたらきます。自分が使うものよりも高価な物を買うのが普通です。
組み合わせで買うな
本当は1つで間に合うのに、せっかくだから、得だからと2つ以上の品を買ってしまうのです。もう一つプレゼント・・などには注意します・
きっかけを機にするな
人はCMなどを見たりテレビでブームを知らなければ、自分が欲しい物がわかりません。見ることによって「欲しい」という気持ちに気付くのです。CMはまさに「欲しい」のきっかけです。街を歩けばショーウインドー、待ちゆく人。すべてが「きっかけ」です。
流行遅れを気にするな
まだまだ着られるのに「流行おくれ」というだけで着られない、使えない物。こうしたものは新たな買い物を生みます。「流行遅れは恥ずかしい」という概念は自分たちが作っているのです。
気安く買うな
「安いから」と着やすく買う事がチリも積もればにつながります。わずかな金額の方が、本人に散財した意識がないので危険なのです。
混乱に影響されるな
不安をあおるような情報を見た時は要注意です。過去にも様々な不安をあおる情報が流れては消えました。一方で危機感をもたなくてはいけない事に「テレビで流れないから」と楽観する事もまた危険なのです。
さいごに
結局、物を持たないミニマリストブームはネットを中心に注目されたに過ぎません。実際のところ、多数の人が「物を持たない暮らし」をしたいのは、住環境が許さないこととコストや手間がかかるからなのです。
結局のところ、みんな「欲」という生きるための本能があるのです。だから物はたくさん持ちたいのです。ただ、居住スペースが足りない。整理や掃除する手間をかけられない。だから物を持たない・・という理由とは潜在的には「物が欲しい」ということです。
例えば昔の大名クラスの人は、たくさん(とは限りませんが)ある物は全て使用人に管理をさせています。そこには使用人に支払うコストが発生しているわけです。裏を返せばコストに投じるお金があるなら物を持ちたいということです。「物が少ないと掃除が楽になる」も、つきつめれば「掃除が大変でさえなければ物を持ちたい」ということです。
「本当は物を持ちたい」ことをまずは認めることが先です。そうした本音にフタをしないことです。そのうえで「持ちたいけれど、負担が大きいから物を減らしたい」と段階を踏む事で周囲の影響を受けずに進めることが出来るのです。