皆さんは、時間をより効率的に使うを使おうと思っていますよね。世の中には時間効率化のノウハウがあふれています。
時間効率化が解決しないのはなぜ
けれども、いまだに解決を試みていない方が多くいます。実際、私も同じでした。どうしてこんなに時間効率化を試みているのに、多くの人が解決しないのでしょうか。
答えは意外なところにありました。それは時間効率化の概念自体が違っていたのです。
今回は、私が書いた著書の中からピックアップして紹介します。2016年に出版された一冊目の書籍、「簡単に暮らせ」紙書籍の場合ですと42項目目、110ページから111ページの
「時間を効率的に使わない」を紹介します。
アマゾン 簡単に暮らせ
かつての時間効率化の概念の基本はどんなものだったでしょうか。それは最近の言い方でいいますとマルチタスクの考えです。
マルチタスクとは
1960年代以来、心理学者は人間のマルチタスクに関する実験や研究を行ってきた。スタンフォード大学の研究者 クリフォード・ナスは、マルチタスクの習慣を頻繁に継続すると能力が向上するのではないかと考えた。
研究の結果、人間がマルチタスクをするとき、脳の中の別々の領域で処理を行っており、同時に並行処理しているわけではなく、それを短時間で頻繁に切り替えを行っていることがわかった。そして、それぞれの処理に関して集中して行うことができなくなっていることがわかった。たとえば2つの作業をマルチタスキングした場合、それぞれ50%の処理能力を維持するわけではなく、80~95%も低下する傾向となる[4]。マルチタスクは明らかに生産性を低下させていることを示した。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
マルチタスク弊害の実体験
書籍「簡単に暮らせ」では、
「 マルチタスクの概念が逆に時間を効率化するどころか、全ての時間を潰してしまいかねない」
ことに自らの経験をもとに気づいたことを記しています。 もっとも、この書籍ではマルチタスクという言葉は全く使っていません。
書籍にも書いてある通り、当初はちまたで言われているように「すべてのことを一定の時間内に同時進行しようとする概念」つまりは「マルチタスクこそが時間を有効活用できる」と広く多くの方に信じていたのです。
そうした価値観が多くある中で、シングルタスクともいうべき逆の概念を記すことは、スムーズに理解はされないであろうことを推測してのことでした。
シングルタスクとは
同時に一つのタスクしか実行できない方式をシングルタスクという。
実際に当時推奨されていたマルチタス的な時間の使い方をしようとすると、あまりうまくいかないことに気づきました。
書籍「簡単に暮らせ」では実例として当時の例を挙げています。一つはこんな行動です。
- はじめにやかんにお湯を沸かします。
- さらに洗濯機を作動します。
- 同時に朝食を作ります。
・・一見どこにでもある誰もが行っている光景です。
お湯を沸かす、 洗濯機を回す、朝食を作る
これらの作業を同時進行で行います。ところがここで早速、弊害が起きます。
私が朝食を食べようとします。温かいご飯と温かい味噌汁、これを口に入れようとした途端、洗面所から洗濯機終了の音が鳴ります。
さて、この時私は一体どちらの選択をするべきでしょうか。
今、口に入れかけた温かい味噌汁と温かいご飯を食べるべきか、 それとも終了ブザーが鳴った洗濯機に向かうべきか。
この場合、大抵答えは決まっています。私がとる行動は洗濯機に向かうことです。 なぜなら洗濯が終了したものをそのまま放置すると、どうなるかが分かっているからです。
せっかく洗い終えた衣類にシワができてしまいます。また、私が朝食を優先した場合その間に雑菌が繁殖し、 変な臭いが発生してしまいます。
温かい朝食を食べるという行動は、あくまで私だけのものです。 私がここで温かい味噌汁とご飯を放棄しさえすれ、ば我が家は何事もなかったかのように軽快に回りだすかに思えます。
つまりはマルチタスクの行動の結果、全てが半端になってしまいます。初めに3つの家事を同時進行しようとしたために結局はどれかを犠牲にしなければなりません。そしていずれも満足のいく家事を遂行できません。
またこんな事例も記しています。
お風呂に入った時に、「ついでに床を磨いたり周辺を軽く掃除をしてからお風呂を出る。」「そうすれば再び掃除のためにお風呂に入らなくても良い」というアドバイスを見かけたことがきっかけでした。
私はそれを受け、当初「これはいい方法だ」と思いました。それで早速、私の入浴とお風呂掃除のマルチタスク的同時進行を行いました。
ところが結果はどうだったでしょうか。
確かにお風呂掃除という目的は実現できました。 けれども、当の私はどうだったでしょうか。冷え性である私は、せっかく温まった体も、 掃除をしているうちにすっかり冷え切ってしまいました。
またお風呂に入りながらも浴室内の汚れが気になってしまうようになりました。 お風呂といえばリラックスできる場所の代表のようなところです。
それなのにも関わらず、 お風呂掃除を同時進行しようとしたために、お風呂でリラックスするということを放棄せざるを得なくなってしまったのです。
ここでもまたマルチタスクの弊害が起きました。
もし、お風呂に入ったときにはお風呂に入ることに集中すれば、効果を存分に味わうことができました。体が暖まりバスタイムを堪能できたはずです。
お風呂掃除は別の機会にすれば、体が冷えることもありませんでした。
同じようなことは家事でも自分の何気ない行動でもいたるところであると気づきました。そこで実は当時推奨されれていた「一定時間内の行動の同時進行」は必ずしも本当の意味での効率化にはならないと気づいたのです。
時間を効率化しようとした行動が、結果として全て半端な状態に陥ってしまうのです。
シングルタスクに徹するよう心がける
以後、可能な範囲で家事などの同時進行を控えるようにしてみました。そうすると何が起こったでしょうか。 一見、時間を無駄にしかねないに思えるいわゆるシングルタスクという方法を取った方が一つ一つのタスクを落ち着いて集中してこなすことができたのです。
最近ではマルチタスク対シングルタスクということで、このような違いは広く知られるようになっています。
私も初めからそのような概念を知っていれば、早く気づけた可能性があったでしょう。 けれども当初はそのような概念を知らなかったのです。
けれどもマルチタス的な同時進行がうまくいかなかった経験から、「出来る限り同時進行はせず一つのことに集中した方が良い」と気づいたのです。
書籍「簡単に暮らせ」「時間を効率的に使わない」のページでは、そのことを身をもって経験した話を取り上げています。
以上、書籍「簡単に暮らせ」の一部を紹介させていただきました。