著者は、レオス・キャピタルワークス株式会社の代表取締役社長 最高投資責任者です。(ひふみ投信)
投資といえば、お金が浮かびますよね。確かにそれもあるのですが、 この本を読むことで知ることができるのは、もっと広い概念です。
私たちは誰しも、多かれ少なかれ不安を抱きます。最近では「老後二千万問題」が話題になりました。
長生きはみんなの希望であっったはずなのに、いざ、実現してみると老後資金という現実がたちはだかっている。
こうした時に注目する方法が「投資家みたいに生きる」ことです。著者は投資家です。 つまり、著者がどんな意志の元に生きているかを知る。それが今から未来を生きる戦略として有効です。
- 投資家の著者は、どんな考えで日々を送っているのでしょうか。
- なぜ、投資家みたいに生きることが今の時代に必要なのでしょうか。
- どうすれば投資家みたいに生きることができるのでしょうか。
途方に暮れる気持ちになる方が多い中、著者である藤野英人さんは言います。 意外ですが、不安の対策は、明確だということです。
将来の不安をなくす戦略は4つあるということ。つまり4つを実行すればいい。意外にシンプルです。では、その内容とは?
将来の不安をなくす4つの戦略
- 若いうちにたくさん稼ぐ
- 支出を抑える
- 長く働く
- 収入の一部を投資に回す
これが著者が掲げる4つの戦略です。
4つのうち、1,2は既に多くの書籍などが出ているし、意識している方は多いそう。多くの人があまり意識していないのは3,4だということです。ということは、3,4を実行すればいいということですね。
3については、確かに意識しなければ「定年まで働いたら、あとはリタイヤ生活」のような概念は根強いでしょう。
けれども、この本を読んでわかるのは、今後の私たちがたどる「働き」とはリタイヤはないのです。そう思います。とは言え、そんなことを言うと「とんでもない。」という声が聞こえることでしょう。
それは「働く」概念を現存の感覚でとらえれば、気がめいるような気がするのだと思います。そうではありません。おそらく、今後の「働く」はこれまでとは概念が激変します。そしてガマンとか忍耐とか「食べるためにいやおうなく」というものではないはずです。
同時に、「コツコツ貯金をしていれば報われるはず」という意識も根強いでしょう。
さらには「投資は危ないもの」という感覚も大きいと思われます。
けれども現代は、寿命が延びた恩恵と共に、ある程度まで働いたらリタイヤ生活するもの」という概念は崩れざるを得ないでしょう。
こうしたことを踏まえつつ、変化の意識を持たなくてはならないのは、この3つだそう。
1 自立
2 労働観
3 金融リテラシー
この3つの概念は、かなりの人に問題があるそうです。
不安の根拠のひとつに、労働者側の賃金が伸び悩んでいることもあると思われます。最近、日本経済自体は緩やかな上昇をみせていました。一方で、日本経済が停滞した理由はなんでしょうか。
それは「リスクを避ける体質」だそうです。結果としてこのような問題が生じているそうです。
- 上の世代が重要なポストに居座る
- 若い人が発揮する場所が増えない
- 新しい価値観が根付かない
何となくあらゆる組織で、同じパターンが繰り返されている感がありますね。わかりやすい例を挙げれば芸能界なんかだってそうです。
テレビではベテラン芸人が引退することなく、幅を利かせています。同時に若い芸人は常にベテラン芸人の顔色を窺っている感があります。
結果として、意見を言えるのは大御所タレントばかり。その人たちに気に入られなければ、良いポジションを得ることができないようです。
確かに大御所芸人が若手を育てている側面があるし、伝統が生む素晴らしさもある。年齢を問わず、現役であり続けること自体は素晴らしいと思います。
一方で、斬新なはずのテレビの世界でさえ、かなりの人が結局は古い慣習としきたりにがんじがらめになっているようです。そうした空気は、実際に内情を知らなくても出演者のその時々の発言などから感じられます。
一方で、新しいことにチャレンジする若い人たちもいるそうです。この人たちはなぜ、不安が大きい人たちと違い、チャレンジするのか。これこそがまさに「投資」の考え方こそがだというわけです。
著者の職業は、ファンドマネージャーです。投資先は、成長が見込める中小企業だそうです。投資先を訪問する中で著者が気付いたことがあるそうですそれは投資の本質です。なぜ、投資するのか。何に対して投資するのか。
結局のところ、その答えは「人」にあるそうです。
さらに著者はこう考えています。「日本人は、二つのグループに分けられる」。
- 失望を最小化する人・・動かない人・・多数派
- 希望を最大化する人・・動く人・・少数派
言うまでもなく、著者が投資先に選ぶ企業は、「希望を最大化する側の人」たちだそうです。
人間は、本能的に「損失回避」の気持ちがありそうです。これは、経済学でノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン等のプロスペクト理論でも実証されているそうです。
「動かない人」は嫉妬の感情が大きい。けれども、「チャレンジするのが怖い」「恥ずかしい」などと言っていては、社会全体の不活性化に繋がると言います。
結局のところ、投資とはエネルギーを投入して、未来から お返しをしていただくことだそう。
目に見える商品に限らず、世の中の活動は誰かがエネルギーを投入して成り立っていること。
つまり世の中の仕組みも物も、ゼロからイチを生み出した人とそのエネルギーが不可欠ということですね。当然、それらにはリスクが付きものです。には、リスクを取る人とエネルギーが必要です。
日本の偉大な投資家である本多清六さんにも触れられています。本多清六さんちなみにはこのような人です。
- 東大教授などを務めた
- 明治大正時代の造園技師
- 投資家
- 収入の1/4を貯蓄。それを株式に長期投資した
- 現在の価値で100億円を越す資産を作った
本多清六さんは、ざっくり言うと、こんな趣旨の発言そしているそう
生きている限り向上しなくてはならない
老人だからといって、安穏とした生活を送ってはならない
本多清六さんをはじめ、真の成功者に共通する特徴があるそうです。それは、
- 利他的であること
- 社会的な影響度が大きいこと
- 大きなパワーを生み出していること
ここで重要なキーワードがあります。それは利多です。成功している人に共通しているのは、「世の中を良くしたい」という思いがあること。決して自分だけがの利益を得るために行動しているのではないこと、に尽きると思います。
結局はそういった気持ちが、最終的に大きなパワーとエネルギーを発するということでしょう。
この本を読むことも、立派な投資だと著者は言います。確かに、書店に足を運び、様々な本に触れ、お金を出してまた、時間をかけて本を読みます。
本を読むという、一見何気ない行為には
- お金
- 時間
- 決断(本を買うか買わないか、どれを買うかなど)
という投資が含まれます。
「投資の本質はエネルギー」であり、これは次の5つと掛け算になっているそうです。
- 主体性(やりたいこと)
- 時間(平等に与えられたもの)
- お金(過去未来の缶詰)
- 決断(成功体験の積み重)
- 運( 謙虚な気持ち)
また、すぐにでも実行できそうなのはお金を使うときの意識です。
お金とは「過去未来の缶詰」だそう。
消費行動も意識して行う ことで、意識が変わるそうです。
例えばコンビニで買ったお茶の150円は、回りまわって他法に行き渡ります。
- 一か月間、全ての買い物(消費活動)の記録を取る
- 無自覚にお金を使うのをやめる
- 「応援」の気持ちでお金を使う
お金の使い方の一つ一つを意識するが、投資かの思考を身につけることにつながるそうです。
私はこれまで、長らく数字の把握のために家計簿を記録したり家庭のお金の流れを確認してきました。
そしてそれこそが大事なことだと思っていました。けれども消費行動ひとつをとっても、もっとその背景を意識すること、同時に応援するから買い物をするという意識はあまりなかったように思えます。
例えば、最近は価格で比較をして「一円でも安い所から買う」のが割と普通です。けれどもわずかの価格差であれば、「応援したい」と思うところから買う。
さらには「たとえ多少、価格が高くても『応援したい』と思うところにお金を投じる」・・「これも立派な投資なんだ。」という事に気が付きました。
つまり投資とは何も投資信託や株を買う様なことだけではないわけです。普段の何気ない行動でも私たちはいつでも投資に参加できるのですね。
今後、再確認したいのは「好き嫌い」だそうです。確かに、私たちの消費行動は好き嫌いで決まっています。
- 今日は何を食べるか
- 今度、どんな服を買うか
- どこに旅行するか
これらの判断基準は好き嫌いです。
今、ビジネス界で再評価されているのは、デザインや美意識の概念だそうです。
単なる論理的な損得は人工知能の代替が可能ですよね。けれども、人には損得だけでは拭いきれない感情があるとのこと。
つまりこれからの時代は、「好き嫌い」のような感覚的な判断を重視しても良い流れがあるということですね。
確かに例えば、最近はビジネスエリートが美術品を鑑賞することに注目しているなどの流れがあると書籍で知りました。
論理で説明が付くようなことは、AIがこなすことができます。けれども、きれいな部屋を見て「こんな部屋に住みたい」と思ったり、かわいいネコの動画を観て癒される気持ちになるような現象はきっと、AIにはまだ代替不可能な世界です。
幼いころから「好き嫌いはいけません」みたいに好き嫌いは意識してはいけないモノだと思って生きて来ました。実際、そういう人は多いでしょう。
けれども現代以降は、なんと「もっと好き嫌いを重視していい」というではありませんか。
考えてみれば好き嫌いとは本来、人に備わった生き抜くための本能であるはず。たとえば、子供が、苦いピーマンは嫌いで、甘いいちごが好きなのは、苦い物は毒性の可能性が高く、甘いものは栄養が高い可能性が高いからです。
心理学者の実験で、「ついている」と思った人の方がチャンスを見つける確率が高いそうです。
松下幸之助さんも、採用面接で
「あなたは運が良い方ですか。悪い方ですか。」
と聞いていた
そうです。
これをかみ砕くと、
- うまくいっているときには、自分の実力だと言って傲慢になったり油断したりしない。
- ダメだった場合も、「所詮は運だからと落ち込みすぎない」ように頭を切り替える 。
・・であり、状況を客観視できていると、自ずと「運が良い」という言葉が口をついて出るのだそうです。
つまり運とは、謙虚な心が発端にある。一方で、普段から不満ばかり抱いていたり、良い結果を自分の力だと思う傲慢さがあると、何か違う状況にあった時の落胆がハンパなくなってしまうということでしょう。結果として「自分は運が悪い」という概念が生まれてしまう。
だから「自分は運が良い」と思う人は必然的に、謙虚さがあり、物事を俯瞰できているということでしょう。
それから、視点を変えてみようと思ったことがあります。それは、
「流行と、もっと仲良くしてみよう」
ということです。
本書にも流行を毛嫌いする人の弊害の例があります。流行とは新しいものです。毛嫌いするというのはつまり、未来ではなく過去にしがみついていることでもある。変化を認めたくないわけですね。
流行とは世の中の人の「気分」が目に見える姿かたちになったものです。だったら、そも「気分」を自分も受け入れてみようというわけです。
ムダに流行を否定して、試しもしないで過去に生きるのではなく、流行を受け入れてもっと積極的に体験してみる。すると思いもかけない事の気付きがあるでしょう。
そう言えば最近、私はアップルウォッチを買いました。中高年女性が使っている確率はまだまだ少ないでしょう。若い人でもそんなに使っていないのがそれです。
使ってみないことには、「何がいいのか」、「何が変わるのか」、は絶対にみえなかった。まあ、新機種ではなく、少し古い型ではありますが、それでもアップルウォッチを使う以前と以後とでは、見える世界がまるで変りました。大げさなようですが、本当にそうなのです。
流行と言えば洋服や靴やバッグのそれが代表的です。確かに以前は、やみくもに流行を追い続けては、お金が足りなくなる恐れもあったでしょう。
けれども現代は違います。ユニクロなどがあるので、ファッションで流行を追うと言ってもたいしてお金はかかりません。
様々なネットサービスから体験できる流行ものも、例えばAmazonのオーディオブックなども、無料で30日体験できます。
今や流行を追うことにお金の有無は関係ない。
つまり、本人の気持ち次第であり、様々な「出来ない理由」は、ほぼ「ない」時代になっているというわけです。
だから投資家の視点でリスクを取りつつ挑戦することこそが、これからを積極的に明るく生き抜くことにつながるというわけですね。
投資家と言えば、数字をこねくり回しているようなイメージが大きかったのですが、実は人の生き方そのものだということがわかりました。
それでは、また。