はじめに
年金受け取り開始は基本65歳。早ければ60歳から受け取れますが、実はこれ、知らないと怖い落とし穴があるんですよ。
そこで今回は、あとで「知らなかった」では済まされない年金の繰り上げ繰り下げ受給にまつわるポイントをお話しします。
もくじ
- はじめに
- もくじ
- 年金の繰り上げ繰り下げ受給ってなに?
- 年金は請求しないともらえない
- 年金の繰り上げ受給をすると減額される。他
- ①繰り上げ請求をすると一生変更不可
- ②繰り上げ請求すると障害年金対象外
- ③国民年金の任意加入できない
- ④寡婦年金を受け取れない
- 繰り下げ受給の注意点
- 年金は繰り上げ繰り下げ、どっちがいいの?
- ただし2022年4月の改正で繰り上げの要件が緩和されます
- それでも繰り上げをするなら2022年4月以降に請求したほうが得
- 繰り下げの改正・受け取りを遅らせれば最大84%増額可能
- 繰り下げをするとしても、月単位でいつまで遅らせるか考えておく
- さいごに
現在まだ、20代、30代、40代だという方は年金といわれてもピンときませんよね。わたしもそうでした。
けれども年金のことを意識するときは、びっくりするほど早く訪れます。ですので知っておいて損はありません。むしろ知らないと大損することがあります。
私は50歳を過ぎてからお金の正確な知識を得るためにFP(ファイナンシャルプランナー)の資格をとりました。そこで気づいたのは「知らない」では済まされないことが多数、存在している事実です。
でも、年金を受け取る前に気づくことができて良かったと、思います。
年金の繰り上げ繰り下げ受給ってなに?
私は50代前半。年金って65歳が基本だけど60歳から早くもらってもいいのよね?
まあね。
繰り上げ請求すれば60歳からもらうことはできるよ。
じゃあ、もらえるものは、さっさともらおうかな~。
60歳になったら請求しようっと。
ちょっと待って。
65歳前にもらうと、減額されるよ。
えっ?そうなの?
でも、あとから変更とかできるんでしょ?
できないよ。
繰り上げ請求って言って、65歳前に年金をもらうと減額されて、それが一生そのままだよ。
一生減額されたまま?
それだけじゃないよ。
万が一障害が出たとき障害年金を受け取る権利も原則なくなるよ。
障害年金?
それから万が一の場合の寡婦年金ももらえなくなるよ。
減額されるだけでもびっくりなのに、障害年金も寡婦年金も出なくなるなんてびっくり。
今回の話のポイントは年金の繰り上げ繰り下げです。でも、年金の繰り上げ、繰り下げ受給と言われても何のことか「さっぱり」だと思います。私もそうでした。FPの資格を取ろうとして、初めて知ったことでした。
年金の繰り上げとは
老齢年金の基本的な受け取り開始は65歳です。けれども届け出をすれば60歳からもらえます。65歳より早くもらうことを「繰り上げ」といいます。
年金の繰り下げとは
一方で年金は65歳を過ぎてから、つまり受け取る時期を遅らせてもらうことができます。65歳を過ぎてから、つまり遅らせてもらうことを繰り下げ受給といいます。
年金は請求しないともらえない
大前提なのですが、年金は請求しないともらえません。そこで受け取りを希望する前に請求をします。
ここで私たちが、年金をいつもらい始めるかを選ぶ必要が出てきます。
年金の繰り上げ受給をすると減額される。他
で、いつもらえば得か?ですが、単純に受け取る時期は65歳を過ぎ、かつ遅らせるほど多くもらえます。
でも、65歳以前に年金を受け取れば(繰り上げ)、受け取る年金は減額されます。でも繰り上げ受給には、さらなる怖い注意点があるのです。
それは単に年金の額が減額されるということだけじゃないのです。以下の注意点があります。
- 取り消しや減額率の変更はできない(一生減額されたまま)
- 障害年金が受け取れない
- 国民年金の任意加入などができない
- 老齢基礎年金を繰上げ受給した妻は、寡婦年金を受け取れない。
①繰り上げ請求をすると一生変更不可
例えば、何も知らないで60歳になったときに繰り上げ受給を開始したとします。
この場合、例えば65歳から受け取る場合と比較して繰り上げ月数×0.5%減額されるので、最大、(2022年4月改正前までの場合)30%減額されます。
具体的には65歳開始なら年78万100円、受け取れた老齢年金が54万6,070円となり234,030円も減額されます。(2022年4月改正前までの場合)
さらにこの減額された額は生きている間ずっと変わらないのです。
②繰り上げ請求すると障害年金対象外
あまり知られていませんが、年金には保険の要素があります。
年金には障害年金の制度があります。ところがまた、病気やけがで障害が出ても、繰り上げ請求をすると、万が一の場合でも障害年金はもらえなくなります。
③国民年金の任意加入できない
何らかの事情で、国民年金の受給資格や納付機関が満たずに年金を満額、受け取れないとします。けれども任意加入をして、追加で年金を納めて要件に合うようになれば年金支払った額に応じて増額されます。
ところがすでに繰り上げ受給をしていると、国民年金の任意加入ができないのです。
④寡婦年金を受け取れない
繰り上げ需給をすると本来、寡婦年金をもらえる資格があっても、もらえなくなります。寡婦年金を受給中の妻が繰上げをすると、寡婦年金は終了します。
繰り下げ受給の注意点
繰下げ受給しても加給年金と振替加算、は増額になりません。加給年金と振替加算は繰り下げ受給との相性がよくありません。
加給年金と振替加算とは?
加給年金と振替加算とは厚生年金などの扶養手当みたいなものです。(厚生年金の加入20年以上が条件)
ただし1926年4月2日~1966年4月1日生まれの方のみです。
ねんきん定期便には記載されませんので注意しましょう。
要はどちらも同じ性質のものですが、
- 夫に支給されている間は加給年金
- 妻に支給されると振替加算
・・という名称になります。
- 妻が65歳になるまで夫の年金に加給年金が出ます。・・加給年金
- 夫が65歳になると、夫の加給年金は打ち切られますが、今度は妻に振替加算が付きます。・・振替加算
②老齢厚生年金を繰下げると、それまで配偶者加給年金額が支給されない。
年金は繰り上げ繰り下げ、どっちがいいの?
一概にどんなことでも断言はできません。
例えば加給年金、振替加算対象の方はそれを含めて、65歳になったらすぐ受給するほうが良い場合があります。
その方その方で、ほかの要件が違いますが、例えば私たち夫婦の場合、私はわずかの差で加給年金(振替加算)はもらえません。年下妻の私の年齢が対象外です。
けれども、現状で判断した場合、何らかの事情(余命がはっきりしている、どうしてもお金が必要、諸条件を理解しつつ繰り上げを選択するなど)でない限り65歳より早く年金をもらうと(繰り上げ)、注意点が多いということを覚えておきましょう。
ただし2022年4月の改正で繰り上げの要件が緩和されます
ただし2022年4月から改正で年金の繰り上げ受給の条件が変わります。結論を言えば①繰り上げ受給の不利な条件が少し緩和されます。
具体的には、繰り上げ受給の割合が現況の0.5%から0.4%に緩和されます。
それでも繰り上げをするなら2022年4月以降に請求したほうが得
ですので、諸条件を理解したうえで繰り上げ受給を検討している場合は、2022年の4月改正が反映された以降に受け取ることを検討したほうが良いです。
現況では最大で0.5%×60か月=30%で、マイナス30%でしたが、改正後は
最大で0.4%×60か月=24%で、マイナス24%、
改正前より最大で6%緩和されています。
繰り下げの改正・受け取りを遅らせれば最大84%増額可能
年金の繰り上げはデメリットが多いけど、繰り下げすれば遅らせるほど年金が増額されるよ。
えっ?年金って繰り下げすると多くなるの?
うん、そうだよ。
一か月あたり0.7%増額されるよ。
現在は最大70歳まで繰り下げだけど、2022年4月からは最大75歳まで遅らせられるよ。
結果、最大で84%増額可能だ。
一方で繰り下げ受給に関しても改正が行われます。こちらは受給割合ではなく、現在では70歳が最大の繰り下げだったところが、75歳まで延ばされたことです。
現況では一か月あたり0.7%の年金増額です。ただ、この割合は繰り下げの変更と違い、変わりません。
とはいえ、現況の最大である70歳まで受け取りを遅らせるとプラス42%も上乗せされいました。(0.7%×60か月=42%」)
さらに改正で2022年4月以降、75歳に受け取り開始を遅らせると、最大で0.7%×120か月=84%で、最大で84%も増額されます。
※けれども寿命は読めないので、遅らせるのがよいかどうかは判断が難しいところです。
繰り下げをするとしても、月単位でいつまで遅らせるか考えておく
前半で挙げたように、繰り上げは早く年金をもらえますが、いろんなデメリットがあります。
少なくとも繰り上げはやめとく。
万が一のとき障害年金、寡婦年金が受け取れなくなったら困るし。
そんなに減額されるなんて知らなかった。
うん、そのほうがいいね。
※判断はご自身の状況で変わります。
年金は長生きするほど得ですが、今後さらに長生きの可能性が多ければ、働けるうちはできるだけ働くことで、年金の繰り下げを同時進行するという手があります。
ちなみにですが、お金を増やす視点で投資は不安がある場合でも、年金の繰り上げをすれば、受取額が増えます。ある意味年金の繰り下げは安全な投資の側面がありますね。
年金はそもそも働いて生活費を稼げないためのものだと、考慮すると元気で働けるなら、年金の受給は遅らせても実質的な問題はないという考え方もひとつです。
さいごに
年金のことは、学校で習いません。ですので内容を知っているか知らないかの個人差は大きいです。
また、時折改正にもなるので、その内容と背景をその都度把握しておきたいですね。年金は今回紹介したように、繰り上げすると、二度と撤回できないという怖い側面があります。
早くもらって引退したいと思うのは早計です。
まずは年金定期便を確認するなど基本的な年金の内容を把握しておくことが大事ですね。
今回は、「知らなかった」では済まされない、うっかりすると大損するかもしれない年金の繰り上げ繰り下げに関するお話をさせていただきました。
参考にしていただけたら、さいわいです。