はじめに
今回は、社会派ブロガーちきりんさんの「自分の時間」をテーマにした、自分の時間を取り戻そう―――ゆとりも成功も手に入れられるたった1つの考え方を紹介します。
本書を手にしたきかっけは、先日読んだ最新刊が、とても興味深かったことです。
もくじ
- はじめに
- もくじ
- 序章・4パターンの人物例でスタート
- 1章・本質の問題は「生産性」にある
- 2章・「高生産性シフト」に対する誤解について
- 3章・「組織の最適化」ではなく「未来へ最適化した働き方」
- 4章・「お金と時間を見える化」する
- 5章・ほしいものをはっきりさせる
- さいごに
自分の時間を取り戻そう―――ゆとりも成功も手に入れられるたった1つの考え方
序章・4パターンの人物例でスタート
4人の状況要約
本書は4人の「忙しすぎる」人の現状(改善前)でスタートします。それぞれの状況が4ページにわたり記載されています。
デキる男 正樹
33歳広告関係の営業職。子供はまだいない。昇格したばかり。自分と部下のコントロールができない。家族の期待にこたえられない不安を抱く。残業中食事の栄養バランスもおざなりになりがち。
頑張る女 ケイコ
夫と小学生2人の4人家族。朝から仕事のメールを片付ける。連日手作り弁当を作りあわただしい。夫実家への帰省の交通費負担、子供の教育費など金銭的悩みが絶えない。義父母には、子供教育費の資金援助を期待するから邪険にできない。精いっぱいなのに余裕がない日々。
休めない女 陽子
就職活動がうまくいかず、契約社員の仕事しか得られなかった。思い切ってフリーランスになる。仕事は順調に増えた。しかし注文が絶えることが怖くて条件が悪くても断れない。結果、休めない日が続く。全てを放り出したい衝動に駆られる。
焦る起業家 勇二
大学卒業後、学生時代の仲間と起業した。事業は順調だが人が増え規模が大きくなるに伴い、仕事のスピード感が落ちた。勇二のスケジュールはいっぱいで何をどうすればよいかわかららない。
4人の事例の記載が長いので、
「早く、『ちきりんさん節』が始まらないかな。」
と待ち望んで、ようやく18ページ目で本題が始まりました。いいよ幕開けです。相変わらず、文章はシンプル明快で分かりやすく読みやすいです。
4人の問題の本質は、長時間働くことが解決法だと考えていることだそうです。これは「頑張りを見せること」が自分のセルフイメージも他者へのアピールとしても受け入れやすい風潮が実は害になっているということでしょう。
残業をしている人がいると、その脇で定時で帰りにくい風潮もその典型ですね。主婦に至っては、手作り弁当、良い母、良い妻、いくつになっても輝く女性・・のようなフレーズが目に浮かびそう。
これでは皆、余裕がなくなって当然です。でも本人は必至なので、そうした事実に気づきにくいことでしょう。
1章・本質の問題は「生産性」にある
まずは「生産性」を上げよう
序章の4人の問題は「生産性の低さ」にあるとのことです。そう聞いて驚く人は多いと思われます。
というのも、4人はみんな「がんばって」いるからです。ところが抜け落ちている問題は「生産性を上げること」だそう。
生産性は、仕事だけではなく、家事、育児、ボランティア、勉強、人付き合いなど成果を最大化する鍵となる概念だそうです。
生産性を意識すると、「仕事がマイナスの人」は「お金をあげるから、どうか働かないでほしい」という世の中があり得るそう。
ときどきベーシックインカムが話題になりますが、本質を見極めると、それまでの「常識」とは全く違う世界があり得ることに驚きを感じます。
「生産性」はビジネスにしか関係ないような、ドライである印象があります。
けれども本書を読むと、全くそうではないことがわかります。仕事もプライベートも、生産性を意識して成果を出せば、各自が思うような成果を出せるわけですね。
ところが「がんばっていること」でセルフイメージや他者へのイメージアップを図ろうとしている風潮は確かによく見かけます。それは自分も含めて、です。
ちなみに「生産性」というタイトルでも本が出版されています。
2章・「高生産性シフト」に対する誤解について
『楽しくない?』
「生産性」が高くなると結局忙しくなるのではないか?という誤解について。
- 高生産性
- 低生産性
- メリハリ型
- 全投入型
をマトリックスで表した図表が掲載されています。ここで私たちが望むのは
高生産性×メリハリ型
であると説いています。生産性は高いけど生活のすべてを投入せずメリハリを効かせるスタイルです。
大事なのは目標が高くなくても生産性が高いと、一日中働く必要がないということです。
後半に早期引退の例が記載されています。今はやりの「FIRE」ですね。これも生産性を上げることで可能になるという具体例が記されています。
2016年出版の本に、すでにこうしたことが記載されていることに驚きました。
クリエイティブになれない?
生産性とクリエイティブな仕事は無関係ではないか?という疑問について、大前研一さんの例が挙げられています。「思考の生産性を高めるために散歩する」概念についての推測が記されます。
つまり「生産性を追求するとクリエイティブになれないのでは?」という考えはありえないというわわけです。
仕事に限らず個人でも嫌なことがあった場合、ストレス発散、など「短時間で目的を達成できる生産性の高い方法」を考えれば早く問題解決に近づけるとのことです。
3章・「組織の最適化」ではなく「未来へ最適化した働き方」
「仕事は遅い方が得」という人がいる「トンデモ理論」の事例も取り上げられています。仕事を遅くして、残業手当をもらうほうが得だという人もいるわけです。
これは「今いる組織の最適化」を優先すると起きる考えだといいます。けれども今の時代、ずっと同じ組織に居続けること自体が希少になるでしょう。
著者は「今いる組織の最適化」ではなく「労働市場での評価」を意識して未来への最適化を図る重要性が記されています。
生産性の差は10年もたてば、決定的な差になるそうです。さらに「機会が奪う仕事ランキング(米国)に表れているように、生産性が高まる世の中が進むと、仕事自体がなくなる懸念がおおいにあるわけです。
だから「組織への最適化」ではなく未来に向けて最適化した働き方が重要だというわけです。
4章・「お金と時間を見える化」する
個人の希少資源とは?
序章に登場する4人は、いずれも時間が足りない。経済全体の希少資源は、エネルギーや食糧などであるのに対し、個人の希少資源は、お金や時間であることが多い。
「自分にとっての希少資源とは?」
を正しく把握しよう。お金は見えやすいけど時間は見えにくい。時間は見えないので軽んじられる。
お金が大事で、時間は大事ではないと思い込んでいると、自分の時間を安く売ってしまいかねない。これは人生をたたき売っていることと変わらない。
自分の時間を安売りしない
「どう付加価値をつければ、自分の時間を高く売ることができるか」
という意識が、時間あたりの生産性を上げていく。
お金に関しては節約を考えることも大事だが、有効な使い方が大事。例えば「過去の一か月や半年で最もお金が有効活用された支出は何か」と振り返ってみる。
生産性の視点でお金を見ると、どれだけ節約したかよりも、お金を有効活用した使い方に重要な視点が行く。
「価値が高いこと以外には使わない」
と決めれば良い。
とかくお金は節約と貯蓄に視点が行くし、ちまたでも人気のネタです。節約も貯蓄も必要だけど、それはいずれ、自分が最も価値が高いことにお金を使うための準備段階ということですね。
5章・ほしいものをはっきりさせる
バックパッカーが欲しいもの
「自分は何を手に入れたいのか」
を正しく理解すべきと著者は言います。例えばバックパッカーが欲しいのは、「どんな国も自分の力で旅できる実証と実感」だそう。つきつめれば「自信」でしょうか。
一方で著者の現状はお金を使うべき時はガイドを雇うなどしつつ、効率的に旅を進めることだそう。つまり手に入れたいものが違えば生産性の高い方法も異なるということです。
ちなみにバックパッカー自身が、実は自分の欲しいものの正体を理解している人は限られているということです。
途中から欲しいものがわからなくなるケース
他には途中から自分の欲しいものがわからなくなるケースとして、例えば不妊治療、資格試験の勉強、のケースが挙げられています。
貴重な資源をこれからも投じるか否かは「過去に使ったからと言って、今後も使わなくてはならない必然性はない」ことが記されています。
バックパッカーが欲しいのは、「どこの国でも旅できた自分」を実感して、自身が付き生きている実感が得られるのかもしれません。
私がかつて、初心者レベルの日帰り登山に行っていたときの心境も、実はそれに近い実感があったと思いました。
欲しいものはときに、考えが変わったり、状況が変化したり、あきらめが必要だということがあります。
そうしたときに、自分はどう選択するのか、という岐路に立つこともあるでしょう。不妊治療、資格試験といった、個人的な選択の分野にも生産性の視点を持つと冷静に判断できることを知りました。
以下、6~8章では引き続き生産性の話題について触れられています。興味のある方はぜひ、本書をよんでみることをおすすめします。
楽天 自分の時間を取り戻そう ゆとりも成功も手に入れられるたった1つの考え方 [ ちきりん ]
さいごに
本書を読み終えた今、
「これだ」
とついに、時間の不足感を改善するヒントをようやく探し終えた気分です。
本書の出版を確認したら、初版は5年前くらいのものでした。そのくらいの出版から間が空くと普通はどうしても情報が古いと感じます。
ところが本書は古いどころか、今もそうですが近い未来に向けても必要な概念が盛り込まれていました。
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