はじめに
世界中で消費される洋服は、年間6200万トン。それに対して
売れ残って捨てられる洋服は、年間9200万トンだそうです。
実はこうした問題には、地球規模の問題につながる要素があるんです。一見、単なるムダとか、エコ、環境オタクの話と思うなかれ、なんです。
今回は、「ADGs」に関する本を紹介します。
もくじ
- はじめに
- もくじ
- SDGsって何
- SDGsを進める理由
- 17の目標の基本「誰一人として取り残さない」
- 経済、社会、環境の調和
- 5つのPが示すもの
- SDGsは企業にとって大きなビジネスチャンスでもある
- ESGとSDGsの関係
- 日本がSDGsを意識し始めた理由
- 服が大量に廃棄される背景
- さいごに
SDGsって何
聞きなれないSDGsという言葉ですが、「エス・ディー・ジーズ」と読みます。
Sustainable Development Goalsの略で、意味は「持続可能な開発目標」です。SDGsには17の目標があります。
カラフルな17色のデザインのマークを目にしたことはないでしょうか。下記のような円のロゴのほか、17の四角いロゴの2種類があります。
これは2030年までに(「我々の世界を変革する:持続可能な2030アジェンダ」略して「2030アジェンダ」)検討すべき課題があり、その中に示された17の目標がSDGsで、例のカラフルな17色のロゴです。
2015年に国連で採択されましたが、あくまで呼びかけなので、強制力はありません。
この目標全体の意味は、この先、世界の
- 社会
- 経済
- 環境
が持続できるように取り組むべき目標です。
SDGsを進める理由
なぜ、最近SDGsをよく聞くようになったかというと、地球が深刻な状態にあるからです。
特に国連が「地球の平均気温が早ければ2030年に上昇幅1.5度に達する」と予測するレポートを出しています。
若い世代の人が真っ先に反応して、気候変動に歯止めをかける活動に真剣に取り組むべきと声を上げ始めたそうです。
SDGsには気候変動以外の課題も含まれますが、貧困や不利な状況にある人ほど関連した被害が大きくなると指摘されているそうです。
SDGsはビジネス関連の用語だと思っている人も多いわけです。ですが、そうではないことを知りました。
スウェーデンの科学者が9つの項目について「この範囲なら人類は安定した発展をできるけど、ある点を超えると相当まずいですよ」という目安を発表しました。
ところが残念なことに、なんと9つのうち4つもの項目が限界値を超えているのだそうです。
- 気候変動
- 土地利用の変化
- 生物多様性の欠損
- 生物地球科学的循環
9つのうち4つって、かなりまずい状態ですね。
ちなみにかろうじて限界値を超えていない項目は以下の5つです。
- オゾンホール
- 海洋酸性化
- 化学物質による汚染
- 淡水の消費
- 大気エアロゾル粒子
だから地球が破産しないように「持続可能にする」という目標を掲げたわけですね。
SDGsにバックキャスティング思考を採用した理由
SDGsはバックキャスティング思考で構成されている点が特徴的です。
フォアキャスティング思考とは
一般的なフォアキャスティング思考では、現在に目を向けて今、何ができるかを考える思考のことです。これと似た思考は、私たちが普段とっている思考法です。
例えば
「今は貯金が全然ない。けれども、もっとお金の使い方を工夫すれば1年後には100万円を貯められるかもしれない。さらにいずれは300万円を貯められるかもしれない」
という考えがフォアキャスティングです。
バックキャスティング思考とは
それに対してバックキャスティング思考とは、未来の目標から逆算して現在までの経過を考える思考です。
例えばバックキャスティング思考では、「3年後に300万円貯めたい。そのためには今、貯金が全然ないから、毎年100万円を貯める必要がある。1年後は100万円、2年後は200万円、3年後は300万円貯める必要がある。」と考えます。
SDGsがバックキャスティング思考を採用しているのは、大きな意識改革が必要だからなのだそうです。
バックキャスティング思考は、将来の状態をもう定めている状態ですから、今までのやり方では難しいという前提があるそう。つまり求めているのは変革だということです。「目標」などの、生ぬるいものではない点に注目しなければなりません。
17の目標の基本「誰一人として取り残さない」
SDGsの大事な理念に「誰一人として取り残さない」があります。「難しい問題はほどほど改善できれば良い」ではなく「必ず解決する」強い意志を示しています。
私たちは通常「人間社会は複雑だから、妥協点を探さなくてはならない」と考えます。ところがSDGsは、そんな生ぬるい妥協を一切認めません。本書では、こうした解決策の妥協を許さない点が「時代の声になりつつある」と説いています。
経済、社会、環境の調和
「2030アジェンダ」の大事な理念の1つが、経済、社会、環境の調和だそうです。その理由ですが、地球上の様々な問題は、必ずどこかでつながっているので、これらが調和した状態を目指す必要があるということです。
外国の博士らが示した「ウェディングケーキモデル」と呼ばれるこの調和を現した図があります。
本書に示されたこの図は、土台には環境があり、その上に社会があり、さらにその上に経済があります。
5つのPが示すもの
「17の目標」に紐づけされている「5つのP」では、以下の内容があります。
- People 人間
- Prosperity 繁栄
- Planet 地球
- Peace 平和
- Partnership パートナーシップ
以下は上記の一部です。
日本の貧困率は15.4%という驚きの数字
例えば貧困については日本では世界規模でみれば貧困ではなくても、国内で相対的に見れば貧困に苦しむ人がたくさんいます。
厚生労働省が2020年に調査したものによると、相対的貧困率は15.4%とあるので驚きました。15.4%とは6.5人に1人です。これは多すぎないでしょうか。
この数字は、年収127万以下で暮らす人が該当するそうです。子供は17歳以下の貧困率が15.3%で7人に1人が貧困にあるそうです。
貧困問題は遠い外国の話だと思っていました。けれどもそうではなく、身近な問題だということを知りました。
飢餓がある一方で、食品は足りている不思議
世界中でいまだに飢餓がなくなりません。では、食料が足りないのかといえば、そんなことはないのです。実は食料は数字の上では足りています。ところが十分な食料を食べられずにいる人が8億人以上世界にいる。
理由としては途上国での農業が近代化していないことや、不足する食料を他国から買えないなどの問題がからみます。
買えない理由には雇用の問題のほか、雇い主が正当な対価を払わない、政府が外貨獲得を主流にするなど様々な問題が絡んでいるそうです。
こんな矛盾が起きるのは、飢餓の問題が政治や社会情勢とのかかわりが大きいからなのだそうです。
ジェンダー平等の獲得
この問題で被害にあっているのは女性です。家族から早くに早期結婚をさせられ、十分に教育を得る機会がないまま家庭内暴力に遭うなどの被害があるそうです。
このような暴力や搾取とまでいかなくても、「女性は男性よりも社会的地位が低い」とされることは日本でもまだあります。
ちなみにジェンダーギャップ指数によると156国中、日本は120位です。先進国にして120位とは恐ろしい低さです。
SDGsは企業にとって大きなビジネスチャンスでもある
SDGsは課題が多い反面、大きなビジネスチャンスでもあるそうです。これは、BSDC(ビジネスと持続可能な開発委員会)が「SDGsには12兆ドルの経済価値がある」と発表したことが根拠になっています。同時に雇用を生む可能性も見られています。
「ビジネスチャンスは、課題のあるところにある」
と、本書は指摘しています。さらにチャンスは大企業ではなく、中小企業にもあるというからこれは見逃せません。
ESGとSDGsの関係
ESGとは環境、社会、企業統治のこと。この3つの投資活動をESG投資といいます。
2006年国連事務総長アナン氏が、PRI(責任投資原則)を提唱して世界の投資機関(銀行、保険会社、年金基金など)にESGを投資対象の決定に盛り込むことを提案したのです。」
さらに企業の長期的な評価は、数字以外にもあるという考えが広がったのです。
- 「環境」では汚染物質を出していないかなど
- 「社会」では下請け工場で労働力の搾取はないかなど
- 「企業統治」では社会取締役を設置しているあ、女性管理職を登用しているかなど
ESG投資は現在、多くも投資機関の賛同を集めています。つまり今後は環境や社会に高い意識を持たない企業は、生き残ることができないのです。
特に注目したいのは、投資機関として大きな比重を占めるのが年金基金、保険会社だということです。ESGの投資先は、必然的にESGに配慮している企業、すなわちSDGsへの取り組みをしている企業になります。
日本がSDGsを意識し始めた理由
現在は大企業の多くがSDGs取り組みに前向きですが、最近のことだそうです。なぜ、最近になって取り組み始めたのかというと、年金の運用機関GPIFの動きが関係しています。GPIFが2015年に、PRIに署名したからです。
PRIとは、環境、社会、ガバナンスのESGへの取り組みの考慮を求めた提言です。つまり「これらに取り組んでいる企業にしか投資しませんよ」ということ。だから日本企業は慌てて意識しはじめたんですね。
GPIFという年金の運用を行う機関は、当然多額の運用資金を持っています。具体的には厚生労働大臣の預託でGPIF→信託銀行や投資顧問会社などの運用受託機関→国内外の債券市場や株式市場で運用しています。
GPIFの運用額は世界最大規模といわれる規模だそうですが、その半分が株式投資で運用されています。
服が大量に廃棄される背景
企業と消費者の意識に問題がある
「はじめに」の話に戻ります。
なぜこんなに、大量に洋服が売られずに捨てられるかというと、売り手の問題があります。企業がブランドイメージを維持するため、売れ残りをセールで裁くのではなくて、廃棄処分をするんですね。
でも、問題は企業だけではありません。買い手の私たちも問題があります。それは安い服をしょっちゅう買い替えるような消費にも問題があります。
いくらイメージ戦略に乗せられるといっても、やはり現状の私たちの「タンスの肥やしが詰まったクローゼット」は問題があります。
「スッキリしたクローゼット」も潜在的に「あふれたクローゼット」と同じケースがある
一方でたとえ「すっきりしたクローゼット」も、問題を抱えていないわけではありません。それは、その「スッキリ」が、買っては捨て、の繰り返しであれば、根本的には「服であふれたクローゼット」と大差ないのです。
結果として、しょっちゅう同じような服を、次々買い替えていく消費者側にも問題があります。
「何かおかしい」と本能的に感じている
さらに私たちは、クローゼットに「あまり着ない服」をため込みながらも、一方で服を大量に捨てざるを得ない状況の罪悪感に苦しみます。
こうした行動を私たちは、なんとなく「おかしい」と本能的に問題を感じています。
それは実際その通りで、実は地球規模で危機的状況にあります。洋服の廃棄の問題は、そのうちの1つの事例ですが、こうしたことは積み重なり、回りまわって地球規模の問題に行きつきます。
さいごに
洋服廃棄の話かと思ったら、いきなり SDGsというわけのわからないアルファベットが出てきて混乱したでしょうか。
けれども現状は、「わからないから関係ない」とは言えない状態にあります。企業は「 SDGsに取り組まないと資金確保をできなくなるかもしれない」の危機感が先なのか、それとも SDGsの取り組みに心から賛同している動きなのか、はわかりませんが、いずれが先でも後でも結果が出ることが必要なんですね。
企業が取り組むということは、政府が取り組むことであるし、それは私たちにも影響があります。個人の意識がありそれが企業や政府そして地球へと反映されるわけです。
今回は、書店で何気なく目に入った一冊の文庫本から、様々な気づきと情報を得ることができました。もちろんこれは基本の知識ですが、知っていることと知らないことでは雲泥の差があります。
こうした取り組みを、一人でも多くの人が知る必要があると思いました。