・「諦めた」
と言う割に多くの場合、実は諦めていないのだと著者の森博嗣さんは言います。
よく相手の話を聞いてみると諦めているのではなくて、「憧れる」ことを諦めたに過ぎないとのことです。
この本は、出版の一年9カ月前に編集者さんから依頼されたものだそうです。
「どのように諦めるのか、気持ちの切り替え方のようなアドバイスが欲しい」
ところが著者いわく、諦めたことはないといいます。もちろん、仕事では締め切りがあれば、ある程度のところで提出しなければならないなどの一般的な制限という意味での「諦め」は当然あると前置きした上でのことです。
依頼した編集者さんの言い方から想像するに、著者の考え方とそもそもの大きな違いがあることに気づきます。
おそらくは、一般的な「諦め」の感じ方が編集者さんのそれと似ていて、著者のように考えて行動している人は少数派なのでしょう。
それがどういうことなのかは本書を読み進めればわかりますが、「諦めないこと」のイメージは昭和なスポ根のような、やたらと力が入ったイメージなのではないでしょうか。
ところが著者には、そのようなイメージがないので、おそらく編集者さんは当然、森博嗣さんも「何らかの諦めを多々経験しているはず」と思っていたのではないでしょうか。
ところが実は森博嗣さんは、本書に書いてあるように一般的な制限での諦めをのぞけば、諦めたことがない人だったのです。
その過程は、スポ根のようにやたら目立ったり、涙を流したりといった大きな動きを世間が察するものではないのでしょう。
著者は多数の著作の中で、「本気で望むなら願いは叶う」と繰り返したそうです。それをもっと言えば、「本当に望むのなら、行動が伴うはずだ」ということだったのです。
「諦めなければいずれ夢は叶うけれども、その渦中で仮に死んでしまったとしたら、一生夢を追い続けたことで叶ったと同然の幸せな人生となるだろう」
と言っています。
そこで著者が指摘するのは、多くの人は実のところ「本当に望んでいない」ことです。行動しないで、願ったりネットでつぶやいているだけだと。
本書には前半に一般の方と著者のQ&Aのページがあります。それらを読んでみると、質問している方に対する著者の回答は、私たちの凝り固まったカチカチの考えをほぐす効果があります。
「それがどうしたということなのでしょう。」
なノリの回答が続きますが、確かに「それがなぜ問題なの?」と、もっと肩の力を抜くことも大事かもしれません。
同時に著者が言うのは、つまり「本当に望んでいるなら、行動を起こすことが先」ですね。
私も行動が後回しになりやすいので、著者の助言の数々は、よくよく肝に銘じてみようと思いました。
そして些細な行動ですが、最近は「0.1歩でもいいから、行動する」ことを自分に課しています。結果、どういうことが起きたでしょうか。
もう、楽しくて仕方がないのです。そして次から次へと次回、行動したいことが浮かぶのです。
行動というと、大変な時間やお金や体力が必要だと思うから二の足を踏むのです。例えばSNSで充実した休日を過ごした人を垣間見て、「私はこんなに遠くまで歩く体力がない」と比較して停止してしまうからいけない。
そうじゃないんです。あくまで人は人であり、自分と比較して一喜一憂するものじゃないんですね。「0.1歩でもいいから、行動する」と考えるようにしたら、自分らしく行動を実際にできるようになりました。
この本を読んで、本当の意味での諦めなんて、一切必要ないのだということを教えられました。