はじめに
今回は、「お墓、葬式、戒名などに関連した宗教の現状と今後」について知ることができる本を紹介します。
もくじ
- はじめに
- もくじ
- 宗教は絶滅の危機に瀕している
- 「終活」について
- 書籍『葬式はいらない』が30万部のベストセラーになった背景
- 「寿命の短い時代」と「寿命が長い時代」による死生観の違いが出る
- 著者はどんな方?
- さいごに
宗教は絶滅の危機に瀕している
神社で初詣をしたり、お寺で葬式を行ったりで、「宗教」は身近なものだったようです。宗教というと、怪しげな新興宗教をイメージして敬遠する方も多いでしょうが、そもそも神社やお寺の存在は、宗教です。
本書によると、神社やお寺をはじめとした私たちに身近であった宗教が、絶滅の危機に瀕しているというのです。
それは日本国内にとどまらないようです。例えばキリスト教でさえ、信者数が減っているので、日本の神社やお寺における宗教同様に危機にあるのだそうです。伝統的なカトリックを離れ新興的なプロテスタントに改宗する人が増えているとのこと。
「終活」について
終活という言葉が生まれた背景
宗教と死生観は切り離せませんが、死に関して「終活」という言葉があります。この言葉の起源は2,009年に「週刊朝日」が「現代終活事情」という連載をはじめ、2,012年には「新語・流行語大賞」にノミネートされたことがきっかけだそうです。ちなみに2,009年には「婚活」がノミネートされたそう。同時にこのころには「無縁死」「孤独死」なども注目されたそう。
ところで「終活」は具体的に何をすることなのでしょうか。本書によれば以下のことが挙げられています。
終活で決めることとは
- 葬儀をどうするのか
- 墓をどうするのか
- 延命治療をのぞむのかどうか
- 遺産相続をどうするのか
- 身辺整理をどうするのか
最近では終活関連のアドバイスが職業にもなっているそうです。特にその際には「エンディングノート」が活用されるそう。もちろん、アドバイザーに相談するまでもなく、個人的に用意しようとする人もいるでしょう。
終活開始の年齢は何歳くらいが一般的か
終活で難しいのは開始年齢だそうです。ただし終活開始の希望年齢を調査したデータによると70歳前後を目安にする人が多いそうです。
また65歳開始を目安にアドバイスする専門家もいるそうです。定年の年齢が上がったり、60歳が原則の定年の企業が多いですが、引き続きアルバイトなどで勤務して65歳くらいに完全な退職という方も多いでしょう。
また、65歳は年金受給開始年齢ですので、名実ともに高齢者の仲間入りという印象があります。ですので、本書にもあるようにこのくらいに開始するのが自然ととれます。
ところが現代は長生きの傾向にあります。実際は「65歳に終活を開始してもまだ早い」現実があります。
年をとると自分の埋葬方法に「興味がなくなる」そうです
著者は散骨を合法化した団体(葬送の自由をすすめる会)の会長を3年弱の間つとめていたそうです。こうした動きがある前は散骨が合法化されていなかったのですね。
そこで興味深いエピソードがあります。それはその団体に会長として事務所にいたとき職員が「年をとったから辞めたい」と電話があったのだそうです。
普通に考えると「年をとったからこそ会員になるのでは?なぜ反対にやめるの?」と思いますよね。
本書によれば、年をとると自分の骨の埋葬方法をはじめ、「自分のことはどうでもよくなってくる」ものらしいのです。
つまり元気な時は、「自分の最期はこうありたい」と希望を持っている。だから終活もする。ところが年をとり、自分の体もままならなくなると関心を失うのだといいます。
書籍『葬式はいらない』が30万部のベストセラーになった背景
葬式は、要らない (幻冬舎新書)という著者が書いた本が2,010年に30万部のベストセラーになったそうです。私も読んだ記憶があります。
このころに家族葬が広まっており葬儀は簡略化する傾向が広まりつつあったそうです。例の書籍がベストセラーになった背景には、多くの人が葬儀代の費用が高いことによる疑問が反映された現象だといいます。
バブル経済期に墓地を求める人が急増
ではなぜ、葬儀費用が高くなり、内訳が不透明になったのでしょうか。本書にはその理由が詳細に書いてあります。
それは第一にバブル経済が1つの発端にあったようです。地価が高騰して、「住宅は無理でも」の思いで墓地を求めた人が急増したのだそうです。さらにそのころ高度経済成長で都会に出てきた人たちの葬式を出す時期と重なったようです。
バブル経済がきっかけで葬儀が派手になり、同時に戒名料と布施が高騰したのがきっかけだそうです。
「寿命の短い時代」と「寿命が長い時代」による死生観の違いが出る
宗教離れが増える背景として、著者は人々の寿命の長さの変化を理由としています。さらに寿命が短かった時代と長い現代を、
- 死生観A
- 死生観B
と分けています。それぞれの特徴は以下の通りです。
かつては寿命が短く、先が読めない。生きているとしても波乱万丈で困難なことが多い。だから人々は宗教に救いを求め必要とされたようです。
ところが現代では、寿命が延び、90歳くらいまで生きられることは、高い確率となったため、宗教は不要になっているということです。
死生観Aの特徴
- 寿命が短い
- いつまで生きられるかわからない
- 長生きを夢見ている
- 災害、飢饉、戦乱などで生きるのが苦しい
- 人生をスケジュール化できない
死生観Bの特徴
- 寿命が長い
- 老後が長すぎる
- 寿命の長さに不安を感じる
- 90歳くらいまで生きられる確率が高い
- 人生をスケジュール化し逆算しなければならない
著者はどんな方?
著者について
1953年東京生まれ。東京大学文学部宗教学宗教史学専修課程卒業、東京大学大学院人文科学研究課博士課程修了。放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員を歴任。現在は作家、宗教学者、東京女子大学非常勤講師。
アマゾン紹介ページより引用
さいごに
誰もが必ずいつかは迎える「死」ですが従来と現代とではかなり違う意識が生まれていることを知りました。特に宗教離れが増える背景に寿命の延びが大きく影響していることも知りました。確かに、宗教とはもともと、先行き不透明な時代に人々が心のよりどころにするために生まれたものでしょう。
ところが現代は寿命が延び、災害やコロナなどのウィルスが蔓延しますが、昔のように不透明なままの状態にはありません。宗教離れが起きるのは自然な成り行きといえます。
同時に本書を読んで、終活の背景などを知り、あいまいでよくわからなかった戒名の起源などを知り大いに参考になりました。
このようなことは、不透明でよくわからないことが多いので、「よくぞ本にしてくれた」の思いです。
またこの本は、自分が将来どういう向き合い方をすればよいかを考える良いきっかけと指標になります。