著名人の読書論系本が好物です。
この本は、「知の巨人」と呼ばれる著者の読書論が詰まった本です。
読書論のほか、最も興味を引いたのは、著者が新たに秘書を1名採用したときにエピソードです。
立花式読書論、読書術、書斎術 ぼくはこんな本を読んできた (文春文庫)
はじめに
いわゆる「秘書問題」があります。この状況の著者はまさに、今回読んだ本には、「秘書問題」を地で行く話題が掲載されていて興味深く読みました。
「知の巨人」の秘書1名をどうやって採用したのか
実際は「秘書問題」同様の採用をしたわけではないのですが、一連のエピソードは興味深かいものでした。
だれかを雇う際の基準は、その人のコアな部分が現れると思います。
著者が秘書を採用した時のエピソードが興味深かった理由
- 「知の巨人」の価値観がわかる
- これほどの人の秘書を務めるのはどんな人物かを知りたいという好奇心
- どうやって秘書を選ぶのか過程と結果を知りたい
単純に、これほど頭のいい人の秘書なんて、応募するだけでもすごいし、そこから選ぶのも大変だろうし、何から何まで興味深いと思いました。
さて、著者の立花隆さんがどのような流れで秘書1名を採用したのか、その流れを簡単にまとめてみました。
立花隆さんとは
ちなみに立花隆さんとは、このような方です。
立花 隆(たちばな たかし、本名:橘 隆志 1940年〈昭和15年〉5月28日 - 2021年〈令和3年〉4月30日)は、日本のジャーナリスト、ノンフィクション作家、評論家である。執筆テーマは、生物学、環境問題、医療、宇宙、政治、経済、生命、哲学、臨死体験など多岐にわたり、多くの著書がベストセラーとなる[1]。その類なき知的欲求を幅広い分野に及ばせているところから「知の巨人」のニックネームを持つ。
「年齢学歴不問・主婦可」で新聞で秘書を募集
「ぼくの秘書公募、500人顛末記」
著者が秘書を募集するにあたって、特に注目した点は、
「年齢学歴不問・主婦可」
としたことです。募集は朝日新聞の広告で募集したそう。(新聞広告を利用した背景として、1993年以前であったこともあるでしょう。)
それでも500通の応募があったそうです。さすがにその数となれば、一人で判断するのは無理なので、4人の人に書類選考をしてもらったそうです。
応募者は多岐に渡り、最高学歴者は、東大医学部大学院卒後、教育学部に学士入学してそこも卒業した29歳女性だそうです。
主婦可にした理由
主婦可にした理由は、「良質の知的労働力が家庭に眠っているに違いないと思った」からだそうです。著者の周りでもそういう人が多く、前任者も主婦だったそうです。
知的レベルの高い人がほしいと思うと、狙い目は主婦だなあと思ったのである。
と書いてありますが、さすがに著者のような方は、偏見が全くありません。
著者が秘書に求めたこと
さて、著者の仕事は分野が多岐にわたるので、扱う資料も幅が広いのだそうです。
だからアシスタントも幅の広い知識が必要だそう。
そこで必要なのは何かというと、「ベーシックな頭の良さと、知的向上心」とのことです。
結果として、どんな人を「ベーシックな頭の良さと、知的向上心」と判断して採用したのか興味津々でした。
500名を21名に絞り、筆記試験を実施したそうです。(途中で1名が辞退)
筆記試験は以下のもの
- 歴代大蔵大臣の名前をあげよ
- 科学者の名前をできるだけあげよ
- 次の人の職業、肩書ないしカテゴリーを述べよ(複数の著名人が挙げられています)・・など
この他実務問題として、実際に電話番を30分やってもらったそうです。
熱意を重視した理由
著者は、あとは熱意と人柄と実務能力だと書いています。
特に重視したのは熱意だといいます。理由は、人間はやりたいことをやっているときが一番幸せで能力を発揮するからとのこと。
比較にはなりませんが、例えば私はブログを書くのが面白くて仕方がありません。幸せです。
だから「どうやったら、続くのか」なんて考えたことがありません。
能力はわからないけど、集中しすぎるとPCの前にいる時間があっという間に過ぎます。だから時間を意識的にセーブしているくらいです。
総合力があり履歴書の密度が群を抜いていた方
最終的に採用した方は、一番総合力がある方だそうです。一方で履歴書が群を抜いており、経歴としてはかなり個性的な方だったようです。
学歴としては高卒ですが、確かに個性的を通り越して「こんなにすごい人がいるのか」ということに驚きました。
- 油絵を描いて4年過ごす
- 放送作家の内弟子を経て一本立ち(NHK「日本の歴史」に4年参画)
- 阪急百貨店宣伝部でコピーライターを兼業
- 三井系の情報サービス会社勤務
- 作家 小松左京の秘書
- 世界の巨木を訪ねる旅をして朝日新聞に連載・・など
「年齢学歴不問」にしておいてよかった
著者は「年齢学歴不問」にしておいてよかった・・と締めくくっています。
この個所を読んで、やはり知的レベルの高い人は、そもそも偏見を持たないものなのだなあと痛感しました。
特に採用に関しては、どうしても年齢や性別でふるいにかけられてしまう話を聞きます。もちろん世の中は、そういう傾向を改善する向きにあるには違いありません。
さいごに
一方で何より自分が偏見で自分をしばってしまうこともあります。そういう背景を多く目にする中で、この個所のエピソードは、採用した著者はもちろんのこと、採用された女性もまた、自分で縛りを設けずに行動を起こしている様子を知って、「そんな生き方もあるのか」と新たな良い刺激を受けました。