はじめに
最近読んだ本がおもしろかったので紹介します。
著者はお茶の水女子大の名誉教授です。専攻は哲学です。ユーモアあふれるエッセイが人気だそうですが、私はこの本を書店で見るまで著者のことは知りませんでした。
著者の奥様のエピソードにあこがれる
奥様の驚くエピソードがユーモアたっぷりに描かれています。真面目に解釈すれば、エピソードはクレーマーみたいです。けれど私は、この奥様にあこがれてしまいました。
こんな風に堂々と、物おじせず世渡りできる女性になりたい。
英語が不完全でも堂々と要求をする奥様
著者の奥様は英語がそれほど得意ではないようです。ところがそれでも言動は日本にいるときと変わりません。
そしてそれが、なぜか通ってしまうのです。こうしてみると、言葉って文法とかTOEICを何点取得しているかではなく、伝えたいという気持ちが先にあるんだと痛感しました。
英語がそれほど話せなくても、一向に物おじしない奥様。私は国内でも日本語が通じるのに場の空気を読んで言葉を飲み込んだりします。
でも本当はこの奥様のように、空気なんていちいち読まないのがいいのです。
焼きそばにそばを入れ忘れても堂々としている奥様
著者の奥様はときどき焼きそばの「そば」を入れ忘れたり、すき焼きをする直前に肉の買い忘れに気付くそうです。
後でそれを奥様が気付いても、だからと言って反省したり落ち込んだり悪びれることは一切ないようです。
確かにたまに(?)そばを入れ忘れたからと言って、何か重大なことが起きるわけじゃありません。
ところが私たちは焼きそばに限らず、いろんなことに完璧を求めすぎているなと思いました。
奥様みたいに、私も焼きそばのそばを入れ忘れてみようかな~、なんて。
メインディッシュがひじき煮だけの食卓
ある時、奥様が作ったひじき煮が気に入ってリクエストしたら、飽きたので断るようになったら「すぐ飽きるのね」とあきられたそうです。
実はなんと、リクエストで出されたひじき煮は、メインディッシュとして出されていたそうです。
ほかにも竹輪のかば焼き風とか、一晩おいたラーメンなどのエピソードが続きます。
食事のメニューを考えるとき、レストランや本のレシピ集みたいに3品並べるとか毎日バランス考えるとかきっちり考えすぎです。
もちろん栄養バランスは大事だけど、たいていの人は仕事や育児や介護でいそがしい。それに加えて毎日違うメニューで献立考えて作るとか、大変すぎます。
世に出回る手抜きメニューって、全然手抜きじゃないものが多すぎます。
「これで手抜き?」
みたいな。
奥様みたいに、悪びれず堂々と1品メニューを繰り返したっていい。どうせ飽きてくるからそしたら違うものを作ればいいですね。
相手を屈服させる奥様
郵便局で為替を現金に換える作業を奥様に頼んだら、記入ミスで結局本人の著者がいくことになったそうです。
郵便局窓口に行くと、はじめは横柄だった職員が、昨日の「奥様」の夫の本人だとわかるや否や態度が一変、急に丁寧になったそうです。
その丁寧さはまるで奥様をおそれているかのよう。帰宅して一体どういうことなのかと、奥様に尋ねたら
「記入ミスの理由をちょっと聞いただけ」
と答えたようです。
そのことをさらに追及すると、奥様は激しい剣幕になり、まさにこの感じなんだなと納得いったそうです。
最近、窓口とかレジとかで何か相手の不手際や説明不足にはたまにあいます。そういう時、今どきの方はそういうことを指摘すると逆にこちらがクレーマー扱いされたり、落ち込んだり不機嫌になるから、客のほうが気を遣うことのほうが多いです。
だけど、こういう時代だからこそ、時にしっかり毅然と指摘することは必要だよなー、と、奥様のエピソードを読んで改めて感じたのでした。
人の目を気にしすぎ
この本の奥様のエピソードで学ぶべきことは、私たちはあまりに人の目を気にしすぎなことです。
人の目ばかり気にするから、言いたいことを飲み込み、やりたいことを我慢しているうちに、自分が何者かなのかさえ見失います。
日ごろから奥様みたいに、自分をベースに生きていれば、ストレスはたまらないでしょう。
「こんな感じでいいだよね」
と、奥様のエピソードを読んで、改めて
「もっと自由にラクに生きなければ」
と思ったのでした。
さいごに
哲学者の奥様のエピソードなんていうと、堅苦しい話かと思いきやむしろ反対です。
何か苦悩したら、著者の奥様の言動を思い出しマネしてみたいと思ったのでした。