家族といってもお互い人間だから、時に感情が先に立ちがちなことは誰にでもあると思います。でも結婚して何年も経過した今、改めて思うことがあります。それは、結局、家族は胃袋のつながりだと。
つまり、例えば妻が夫と険悪な空気にならない平和な日々の秘訣はシンプルなのです。私だけが思っている可能性もありますが、とりあえず胃袋を満たしていればいい。具体的には外食など、外では食べられないものを自宅でふんだんに食べられるようにしておけばいい。最近、改めてそうした事に気づきました。
出す食事は特別なものじゃなくていい。けれども外食ではとうてい食べられない、たっぷりの緑黄野菜や、十分な量のたんぱく質、そしてシンプルに塩、しょうゆ、みそで味付けを軽く味付けしたものだけど、ほっとする食事を適度に出してさえすればいい。
手抜きをするのは、配膳などの部分であって、決して食そのものの手を抜いては家族としてのだいご味はなくなってしまう。
何をもって家族が円満といえるかは、当人がそれぞれ、家が一番気楽だと思えることじゃないかと。
そうした中で、外ではくたくたに疲れてきても、やはり食が疲労をも回復してくれる。食は誰が作っても構わないけれど、時間の融通が利く人が作ればいいでしょう。
だいぶ前に読んだある本に、料理人はいわゆるボケる人が少ないという記述がありました。料理とはあらゆることを瞬時に判断し、段取りしなくてはなりません。だから常にそういうことをやっている料理人はボケる暇がないのでしょう。
特別脳トレなんてやらなくても、普通に日々の食を作ることが必然的に脳をフル活用することになるのでしょう。頭の中だけではありません。野菜を洗い、皮をむき,重さを測り、比率を確認して、ゴールという料理の完成をイメージしながらの作業は、複雑な人間の機能をフルに使っているものですね。
私はつい最近まで、果物の皮をむくのが面倒でしかたありませんでした。(りんごは皮を洗って皮ごと食べていました。そのほうが栄養価が高いそうです)ですので皮むきが必要な果物は買い控えていました。ところがたまたま、お得な柑橘訳ありセットを注文してしまったのです。
結果として、はじめは義務感に駆られて甘夏や清見オレンジの皮をナイフで剥きました。すると確かに面倒は面倒ですが、やっているうちに面白くなってきました。届いた瞬間、ついお得さに目を奪われ、皮をむかなくてはいけないことを忘れていた自分の馬鹿さ加減に気が付いたのですが、結果としてこの失態は良い結果になりました。
皮をむいた瞬間、芳香剤では得られない柑橘の自然の香りが漂います。皮をゴミ箱に投入してもゴミなのにいい香りがするのです。
面倒くさいことって、本当は楽しさが隠れているんだな、と気づいた一件でした。同時に、皮をむく果物をしばらく買っていなかったことに気づきました。目新しい新鮮な柑橘があるだけで、自分の心もなごみます。