はじめに
今回は、数年前に実施した夫の実家の墓じまいについてお話します。実家が地方にあり、自分たちは都会に住んでいるなどで実家がらみの気がかりを抱えている方は多いはずです。その気がかりに一歩踏み出す何らかのヒントになればさいわいです。
義実家の墓のこと
きっかけは義母が亡くなったことです。(義父はその数年前に他界)墓は不便な場所にあり、墓自体も古くなっていました。そのため私たち夫婦は、墓のことをいずれは解決しなければならないと考えていました。けれども墓のことはデリケートな問題です。義両親の意向もありますから、私たち夫婦は勝手に動くことはできませんでした。
もっとも、結婚当初は近いうちに実家のお墓を立て直すつもりでした。その頃は地元で暮らしていくと思っていたからです。それで一度ざっくり見積もりを取ったことがあります。(費用は夫が出す予定でした)
地元で墓を管理するのは無理な状態に
けれどもその後、私たち夫婦は首都圏に夫の転勤で越してきており、私が身体的に地元に帰るのは無理になり(寒冷地で暮らすのは無理)ました。
そんな折、義母が亡くなり、墓の問題が再浮上したのです。冷静に考えて元の墓を維持するのは無理がありました。
また、義両親が亡くなってからは、頻繁に地元に墓参りと管理のために行き来するのも無理があります。
それで考えたのは、以下のいずれかの選択です。
1・こちら(首都圏)に墓を移す
2・こちら(首都圏)で永代供養できる寺などに移す
3・地元で永代供養できる寺などに移す
すると偶然にも、しばらくして新たな4つ目の選択肢ができました。
4・地元で元のお寺で永代供養に移す
もともとの檀家のお寺では、住職さんが息子さんの代に代わっていました。同時に以前はなかった永代供養の制度が開始されていたのです。
元のお寺で永代供養へ移行&墓じまいへ
というわけで、「4」の選択が一番問題なく行われそうです。
結論を言うと、夫は住職さんに相談しつつ、墓地の撤去、整地についても地方ならではの難しい問題も、住職さんが間に入ってくれました。
(住職さんがどの程度かかわるかは、その状況によると思われます。)
夫の実家の墓地は、お寺の墓地ではなくその地域の民間の墓地だったのですが、いろいろ複雑なしきたりや慣習があるようでした。お寺、石材業者、土木業者などが提携しているような感じです。
だから、ほかのところから墓石を買ったり整地を依頼することはほぼ不可能であり、見積もりは本来、あってないようなものでした。
だいぶ前に一度、名ばかりの口頭の見積もりをその石材業者さんに依頼したことがあります。が、
「初めに予算を言ってくれたら、それに合わせて作るんだけど。」
という感じなのです。
具体的には
「最低〇百万円くらい」
のような感じです。けれどもこの時は
「いったん、考えます」
といい、即答しなかったのです。そのくらい「田舎あるある」の避けられない難しさがありました。
けれども新たな住職さんは(夫と同年代です)そうしたことも全てひっくるめて面倒なやり取りを間に入ってうまくやってくれました。
(当然ですが、住職さんが間に入ってくれるとは限りません。)
おかげで、本来ないはずの見積もり書を頂くことができました。業者さんいわく、
「こんなのはじめて」
だったそうです。そして提示された金額は、事前に調べた相場などと比較して妥当と思われるものでした。
檀家を離れる
そして同じお寺の永代供養に移動の手続きを経て、当時に檀家を離れました。
通常、墓地を移すにしても永代供養にするにしても、檀家を離れると法外な離檀料を請求されてもめることがあるとされています。
実は一番心配したのはこの件でしたが、さいわいに全く問題なくことが終わりました。しいて言えば同じお寺で永代供養に移行したということもあると思います。
同じお寺の境内にある永代供養なら、義両親も比較的違和感がないのではないかという思いがあります。
周囲の反応
あと心配だったのは、親せきや夫の弟の反応です。夫の弟については、幸いに夫を全面的に信頼して協力的です。だからこの点も問題ありませんでした。
親戚ですが、以前はもしかしたら何か言われた可能性もありますが、最近は親戚も年齢を重ねており私たちに意見するような人がいる年代ではなくなっていました。
最後まで迷った
それでもやはり
「本当にいいのだろうか。」
という迷いがありました。それでも決心したのは息子の負担を考えてのことです。
「あいまいな先送りを、これ以上させられない。」
これまで、私たちは結婚してから水面下でお墓のことをどうしようかと考え続けていました。
仮に迷い続けた結果、墓地をそのままにしたとします。すると墓地の手入れが行き届かず、かえって失礼なことになりかねません。
それよりもここで私たち夫婦が決断をして、苦しい気持ちもここで受け止めてしまおう。そう決心しました。墓をその場所で引き継がない以上は、誰かがその役割をいつか誰かが担わなくてはなりません。
これが正解かどうかは、今でもわかりません。非難をする人もいるかもしれません。けれども私たち夫婦はこの形を選択したということです。
今回は、結婚直後から考えていた義実家の墓について、私たち夫婦がとった選択に関する話をしました。
生きている人間ができることの限界
生きてる人間には限界があります。その範囲でできる限りのことを選択するしかありません。同時に周囲の人全員に褒められるような結果を出すことは到底できません。
どの選択をするにしても、大事なのは生きている人間です。もちろん亡くなった方を敬意をもって供養することは必要です。
一方で亡くなった方への思いも大切にしたい気持ちももちろんあります。選択した方法が理想的でない場合は、ジレンマがおきます。
けれども現代は昔と生活が変わっています。長男が家と墓を継いでいく時代ではないのです。そうなると気持ちはあっても、物理的な距離や費用の問題が出ます。
そうした中で生きている人間ができる妥協点をさぐるしかありません。
一方で理想に忠実になるあまり、生きている人間が負担になることが本当に良い選択とも思えません。
永代供養に移行
そのようなことを、さんざん何年も考えてきて、私たち夫婦は墓じまいをして、永代供養に移行するという結論を出しました。
結婚以来、義実家の墓に行くたびに気になっていたことですが、義両親の生存中は勝手なことはできないし角が立つから意見もできませんでした。
けれどもときには「白黒はっきりさせないで放置する」ことも必要だと考え、長年保留にしてきました。
そして義両親が亡くなり、結論を出す時が来たのです。それは突然といえば突然でしたが、結論を出してやっと墓の結論が出て安堵しました。
これまで頭の何パーセントかは、無意識レベルで墓のことを考えていたと思います。
墓じまいと永代供養にかかった費用
墓じまいと永代供養にかかった費用は
- 墓地の墓石撤去費用
- 整地費用
- 永代供養費用
- 離檀料 0円
- 交通費
などです。いくら比較的少なくて済んだとはいえ、葬儀費用他、墓じまい費用、永代供養の費用と、合計ではそれなりにまとまった費用になりました。
けれども費用については、夫は長男ですし、(という縛りが今は時代遅れですが、現実問題として費用は長男に降りかかるのが現実です。)結婚直後からいずれ墓は何かしら費用が発生することは想定していましたし、葬儀費用も想定外ではありません。ですので費用は私たちの生活費や貯蓄とは別にプール貯金をしていました。だからそこから出しましたので特に費用捻出に慌てるようなことはありませんでした。
具体的な金額を知りたいところでしょうが、代替相場並みか、やや少ないくらいだと思います。この辺はケースバイケースかもしれません。
さいごに
費用の問題ではなく、相手があることなので自分たちの勝手にはできないことというのはあるものです。こういうことは時が解決するということもあるものだと痛感します。
いろいろな考えがあるでしょうが、何らかのヒントになればさいわいです。