はじめに
「現代版スモールプレハブ住宅」
晩年、あの著名人が住んでいたのは、以外にも単なる質素倹約なものではなかったことに驚きました。確かに暮らしは質素だったと思われますが、そもそものその建物はなんと「特注品」だった可能性さえあるそうです。
ミニマルな暮らしに興味がある方は、スモールハウスと聞けば血が騒ぐのではないでしょうか。
そんな住まいに晩年、暮らしていたのは、教科書でだれでも名前を聞いたことがある鴨長明(かものちょうめい)という人です。
本日のお品書き
- はじめに
- 本日のお品書き
- スモールハウスは下鴨神社摂社に復元設置されている庵(いおり)
- 質素に見える庵は特注した高級部材使用品か
- あえて選んだ小さい家
- 人と適度に接触しながらの生活
- 目まぐるしい変化の時代に生きれば確かに
- この書籍について
- さいごに
スモールハウスは下鴨神社摂社に復元設置されている庵(いおり)
出典 方丈記(全) ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)
この本の冒頭に「(京都府)下鴨神社摂社に復元設置されている、鴨長明がある時期から住んだ庵」の写真が掲載されています。
意外なのは、その庵が今でいうプレハブ住宅だったことです。単に「ボロくて質素」なものとは違うという点です。
質素に見える庵は特注した高級部材使用品か
もともと相応の身分のある人が、「都会を離れての一人暮らし」なんて言うと、もともとあった小屋を利用したとかなんとか想像しますよね。
でも、この庵はそうじゃないんです。組み立て式で、不要になったら解体して車二台ほどで移動できるらしい。当時の「車2台」とは現代でいえば軽トラくらいの積載量だと推測します。
本書の解説には
「一見質素に見えるけれど、実は大工に特注した高級部材ではないか」
と書いてあります。
あえて選んだ小さい家
今でも一般に「小さいミニマルな住まい=貧乏」と思われがちです。「人はお金があるのなら、大きくて立派な家に住みたいはずだ」というわけです。
ところが鴨長明が住んだ庵は、わざわざお金をかけて、小さく質素に簡素に暮らすための特注品だった可能性があるようです。
人と適度に接触しながらの生活
さらに脱都会をしたわけではなくて、今でいうところのトカイナカ(日野というところ)で、街を見ながら暮らし、必要に応じて街に降りていたそうです。
よくあるのは、人の世に嫌気をさして人里から離れる生き方をするようなことです。たとえばアルプスの少女ハイジのおじいさんはそうですね。
一方で鴨長明は、人から完全に離れていたわけではないようです。そもそもですが、この庵は「自己の無常論の実践」だったそうで、広さは今でいう四畳半くらいの広さだったようです。
目まぐるしい変化の時代に生きれば確かに
「無常論の実践」が何なのかはわかりませんが、改めて方丈記を読むと、少なくとも鴨長明が生きた時代は、大きな天災が数回あったし、鎌倉幕府ができた時期でもあり、激動の時代だったようです。
確かに天災が何度も押し寄せ、政権もめまぐるしく変わっては、価値観が安定せず、いろいろな思いが交差するのは当然です。
現代の令和も、平成には千年に一度の大震災が起きたし、今はコロナの真っただ中にあります。現代だからこれで済んでいるけれど、昔であれば様々な変化に対応するだけでも大変だったはずです。
この書籍について
ちなみにこの本は紙の本で読むことをおすすめします。内容によってテキストのサイズが変えてあったり挿絵があったりと電子書籍にはない、魅力があります。
音読が可能なように、すべてにルビがふってあります。同様の書籍は多数出ていますが、難しい説明ではなく誰にでもわかる初心者向けの解説で、読みやすい構成になっています。
さいごに
現代もわたしたちは価値観の変化にはじまり、天災、疫病(コロナ)が流行して、落ち着かない日々を過ごしています。
そういうときに暮らしていると、「そもそもどうして?」ということを考える良いきっかけになる時期でもありますね。
鴨長明もいろいろな思いがあり、小さな庵での生活をしたようです。コロナが始まってから、身の回りの品を見直して断捨離をしたりした方も多いのは、同じような思いが多かれ少なかれあるからなのでしょうね。
私も最近、ずっと先送りにしていた大物処分をして、根本を見直す機会を得ました。