「身近にいた。本当のミニマリスト」の極限の財布とは。
(画像はイメージです。)
本当のミニマリストとは、案外、身近にいるものです。特徴的なのは、本人も周囲も、それとは気付いていない事です。ごく自然にミニマリストな生き方をしています。私の身近にも、そんな人がいます。
それは父です。例えば現在の父の財布は胸ポケットです。運転免許証もそうです。以前、財布を父の日にプレゼントしたことがあります。ニコニコしてとても喜んでくれました。あれから数年。たまたま用事があって出かけたときに、父がお金を取り出したのは財布ではなく洋服の胸ポケットからでした。「え?落としたりしないの?大丈夫?」「フタがあるから大丈夫。今まで落としたことはない。出し入れも楽。身軽だし、結局これが一番。」そんな答えが父から返ってきました。
持たなくても不安がない理由
ついでに言えば、父は今時携帯電話も持っていません。年中、気ままにひとりであちこち出歩いている様ですが、それでも何とかなっているようです。母は、父とは正反対の性格なので、そんな父にいつもヤキモキし心配しています。父の場合、「持たない」事が原因で困った自体になったというのは不思議に今のところないのです。
スキルがあれば多くの物は必要ない。
ただし、思うにそれは父だからなせるワザなのかもしれません。というのは、父は普段、非常に温厚でマイペース、見ようによっては、温厚さが頼りないように映る事もあります。けれども実は頑固な面と器用さを持ち合わせています。
母と二人で車で山に出かけた時のこと、うっかりガス欠を起こしてしまったそうです。周囲に民家やガソリンスタンドがなく、道の途中で車が停まってしまったため、母は非常に慌てたと言います。ところが父は黙って静かに車を降り運転席の窓を開けて(パワーウインドウではなかった)車の外側からハンドルを握りながら母に「車を降りて後ろから車を押してくれ。」と言ったそうです。母は言われたとおりに車を押し、車を安全な場所に移動したそう。そして、何か父がある作業をすると、なんとエンジンがかかったので母はビックリしたと言います。
私は車のことは何も分かりませんが、とにかく一度山の中でガス欠で停車してしまった車を一時的に(?)エンジンをかけ、とりあえず山道を走り、最初のガソリンスタンドに無事たどり着いてガソリンを補給することが出来たそうです。あれにはびっくりしたと母が言っていました。
スキルの習得は「その道のプロ」に直接聞く
車のことには詳しくない私でも、「そんなことはありえない。」と思います。ガス欠ではなかった?のかどうかわかりませんが、とにかくそんな感じで、いざというマニュアルにはないようなアクシデントにも慌てず対応できる何らかのスキルが父にはあるようです。車のことに限らず全てにおいて・・です。
家の中の補修も、可能な限り自分で行います。分からないことがあると、たまたま近所に家の改修工事をしに来ていた業者さんが、休憩で外でたばこを吸っているとことをつかまえるのです。何気に世間話をしながら話しかけ、直接、その道のプロから情報収集しているようです。何の業者なのかは停めてある車の社名でだいたいわかるそうです。
「グーグル先生」より高い密度の答えは生身の人から
幼い時から父はこんな調子です。でも一切、広いスキルがあることを公言することもありません。ただ、家族が何気に困っているときに、黙って静かに助け船を出してくれるだけです。傍目には「どこにでもいる気の良さそうなおじさん」です。父が何も持たずとも一切不安がないのは生活に関する面においては自分そのものがアプリの塊であるような人だからなのかもしれません。現代だったら、わからないことは「グーグル先生」に質問するという人が多いでしょう。確かに「グーグル先生」は多様な疑問に答えてくれますがおそらく実際に「その道のプロ」から直接教えてもらうのとは密度が違う事でしょう。私の場合は、何のスキルも持っていません。だから、「いざというときに備えて、ある程度の持ち物を持っていなくては生活が出来ないのです。真のミニマリストとは、このように意識することなく、自然に結果として持たない暮らしをしているのではないかと思います。